お知らせ

2023年3月3日の裁判で和解が成立しましたので報告します。

長年ご両親をご支援いただきました方々に感謝いたします。

以下に遺族記者会見の内容をご紹介します。

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              和解内容

本件に関する和解の内容で主な点は、次のとおりです。

1 東広島市からの謝罪
本件中学校における教員らの男子生徒に対する指導について、
①恥をかかせるようなものがあったこと
②大声を出すなど威圧的なものがあったこと
③厳しい別の教員に伝えておくと告げるなど脅迫的なものがあったこと
④机を蹴るなど暴力的なものがあったこと
⑤部活動参加の懇願を聞き入れず、改めて話を聞く機会を設けないなど、不安感を殊更に募らせるものがあったこと
⑥下校時間を過ぎていたのに、定められていた保護者への連絡をすることなく、 一人で帰路につかせるなど、フォローに欠けるものがあったこと
を認め、男子生徒が自死に追い詰められる結果となったことを真摯に受け止め、謝罪する。
2 東広島市からの謝罪
(1)男子生徒の救急救命時の対応において、伝達を誤るなど、不手際があったことを認め、謝罪する。
(2)男子生徒の自死に関して、事実関係が定かでないまま、男子生徒が「かぼち やを隠すいたずらをした」、「嘘をついた」などと報道される結果となったことを真摯に受け止め、謝罪する。
3 再発防止措置
(1)今後、教員らの指導により、児童・生徒が自死に追いつめられることがないよう、教員に対する研修を実施し、また、児童・生徒に対しても、他の児童・生徒が死を仄めかした場合や過度に落ち込んだ様子を見た場合の適切な対応について学習する機会を提供することなどにより、児童・生徒の自死の再発防止について、最大限努めることが(ルーチン化させることなく、不断の検証・見直しを行うこと)を確約する。
(2)前記(1)の研修に当たっては、男子生徒の自死があったことを決して風化させることなく、「文部科学省『生徒指導提要』令和4年12月」105頁に示されている「不適切な指導と考えられ得る例」を題材として用いることを確約する。
4 金銭支払い
(1)被告東広島市は、原告らに対し、和解金として合計1000万円(各500万円)を支払う。
(2)被告センターは、原告らに対し、災害共済給付(死亡見舞金)として既払額(1400万円)を除き合計1400万円(各700万円)を支払う。

🔷生徒指導提要はこちらから(105頁に示されている「不適切な指導と考えられ得る例」を参照ください)

文部科学省『生徒指導提要』2022年12月(第1.0.1版) (mext.go.jp)

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            両親コメント

令和5年1月、息子が亡くなってから10年、裁判所から和解案が示されました。

和解案の内容は、教員らの息子に対する指導について、①恥をかかせるようなものがあったこと、②大声を出すなど威圧的なものがあったこと、③厳しい別の教員に伝えておくと告げるなど脅迫的なものがあったこと、④机を蹴るなど暴力的なものがあったこと、⑤部活動参加の懇願を聞き入れず、改めて話を聞く機会を設けないなど、不安感を殊更に募らせるものがあったこと、⑥下校時間を過ぎていたのに、定められていた保護者への連絡をすることなく、一人で帰路につかせるなど、フォローに欠けるものがあったこと、この6つの事実が裁判所によって認定できるということを前提としたものです。

これらの息子への指導の問題点は東広島市教育委員会が設置した生徒の死亡にかかる調査委員会では明らかにされなかったことです。

10年という膨大な月日を経て、ようやく、息子の死が、学校教員らの不適切な指導によ

って、自死に追い詰められた「指導死」であることが明らかとされました。

和解案は、このことを市長及び教育長をはじめとする教育委員会事務局など東広島市が真摯に受止め謝罪し、不適切な指導を踏まえた再発防止への取り組みに向けたいくつもの義務を負う内容となっていました。判決では再発防止の実施を義務として負わせることはできず、金銭の支払いしか命じることはできないということは提訴時から聞き及んでいることでしたので、裁判所の和解案を受け入れて、和解する考えに至りました。

東広島市教育委員会が設置した生徒の死亡にかかる調査委員会では正しく事実が認定されなかった結果、不適切な指導の問題が十分認識されず、適切な再発防止策の検討がなされていません。息子に対する教員の指導の問題を厳しく指摘した裁判所和解案を被告東広島市が受け入れたことで、ようやく、再発防止に向けた一歩が踏み出せたと思っています。

東広島市の再発防止の取り組みは10年遅れていますので、一日でも早く、実効性のある再発防止策が実施されるようになることを祈っています。

息子の事案は生徒指導提要改訂版に記載されている「不適切な指導と考え得る例」と共通した問題点を多く含んでいますので、こちらを題材にした研修など再発防止策をしっかり実施して欲しいと思います。

息子の事案では、調査委員会を含む背景調査のあり方やアンケートの開示など、遺族への情報提供のあり方、報道機関への対応についても大きな問題がありました。このことは和解案でも一部言及があるところです。今後、あってはならないのですが、同種の事案が発生した時の緊急対応の在り方を今一度考えて欲しいと思います。

子どもたちの命を救う責任があるのは学校、先生方です。

和解条項にもあるように、今後、教員らの指導により追い詰められ、死を選ばざるをえなくなってしまう子どもが出ないよう、学校の責任において、子どもたちを守る、そのために教員に対して研修を行うことは必須です。この和解によって、東広島市はこうした研修を実施する義務を負うことになりました。私たちは、東広島市がこうした義務をきちんと果たしているかどうか、しっかり見ていきたいと思っています。

私たちも遺族として、再発防止に協力していきたいと考えています。

東広島市にも、私たち家族とも連携を取りながら改善を進めて行っていただきたいと思います。

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            弁護団コメント

両親が提訴に至った理由は、調査委員会の調査は不十分であったわが子の自死の真相究明でした。訴訟をすることによって事実関係を解明し、わが子に対する教員らの指導が不適切であったことを明らかにし謝罪せせる、再発防止策を講じてもらう。これが両親の最大の願いでした。
今年1月、裁判所から提示された和解案には、教員らが生徒に対して行った6つの不適切な指導について東広島市がこれを認め謝罪することが盛り込まれていました。また、再発防止策として、教員向けの研修実施や対応方法に関する学習機会の確保、あるいは令和4年12月に発表された文科省の生徒指導提要の該当部分が引用されるなど具体的な再発防止策が盛り込まれ、東広島市はこれをルーチン化させることなく不断の検証・見直しを行うことを確約する、という内容であり、さらに、東広島市から1000万円の解決金を支払う、また、スポーツ振興センターから既払金1400万円とは別に1400万円の給付金を支払う(死亡見舞金としては満額)というものでした。
両親はこの和解案について、教員の不適切な指導による指導死であることが明らかになり、謝罪や具体的な再発防止策など、判決では得ることができない重要事項が多数盛り込まれたこと、金銭給付としても相応に納得のいく金額であることから提訴の目的を達したものと考え、このたび和解に応じる決断をされましたが、弁護団としても今回の和解内容は、和解に応じるに十分な内容であると考えています。
次に、本件は2012年(平成24年)に発生した問題ですが、解決までに10年という時間を要しました。
このような長期間を要した一番大きな原因は、男子生徒の自死後に、学校や教育委員会が、本件について保有する各種の資料(学校や調査委員会が実施した生徒や教員に対するアンケートや聴取記録など)を両親に開示しなかったことにあります。
そのため、両親は、裁判外で、東広島市に対し、膨大な回数の開示請求手続きを行いました。裁判手続きにおいても、学校、教育委員会が保有する資料が遺族に開示されるよう、証拠保全、行政訴訟、民事訴訟の文書提出命令中立などの手段を用いて資料の開示を求めました。
しかし、当たり障りのないような文書は開示される一方で、自死に直接かかわるような直接的な事実関係や評価が記載されているはずの生徒や教員のアンケートや聴取記録については開示されませんでした。本件訴訟の中で、裁判所から、任意の提出を求められたときにも、東広島市は応じませんでした。各手続きの中で、東広島市はアンケートや聴取記録の開示により「公務の遂行に著しい支障を生じる恐れがある」などと主張し、開示を拒絶し続けました。こうした中、2020年(令和2年)11月に文書提出命令申立事件の広島高等裁判所の即時抗告審で生徒や教員のアンケート、聴取記録など、重要な文書の提出を命じる決定が出されました。
東広島市は、この高等裁判所の決定に対しても、最高裁判所に特別抗告を申し立て、2021年(令和3年)6月に最高裁判所が東広島市の特別抗告を棄却しました。自死発生から約8年が経過し、はじめて両親はアンケートや聴取記録の具体的な内容を知ることができ、それに続く教員らの証人尋問によって、わが子が教員らの不適切な指導によって死に追い込まれた経過を知ることができました。
今回の和解において、教員らが男子生徒に対して行った6つの不適切な指導を明記する結果に至ったのは、アンケート等の開示が大きかったと言えます。
もし学校と教育委員会が本件生徒の自死の後、すぐに事実の解明を行い、また両親に関係資料をすべて開示し説明を尽くしていれば、両親は、「なぜわが子が死に至ったのか」と悩み続けることも、長く困難な訴訟を続ける必要もありませんでした。東広島市がなぜ両親に対し、これらの関係資料の開示を早期に行わなかったのでしょうか。
学校に起因すると疑われる生徒の自死が発生した場合、両親には、その詳細な経過・原因について知る権利があり、学校や教育委員会に対して真相解明に不可欠な資料(本件では、生徒や教員に対するアンケートや聴取記録)を直ちに開示するよう求める権利があるはずです。東広島市には、これらのアンケートや聴取記録が、誰のためのものであったのか、本件を振り返っていただき、今後の情報開示の在り方について真摯に向き合っていただきたいと考えています。
また、これらのアンケートや聴取記録の中には、生徒、教員らが、当時の教員の指導のあり方や、生徒指導規程やその運用の問題点を指摘し、改善を求める内容のものが少なからず含まれていました。東広島市が再発防止策を講じるにあたっては、アンケートや聴取記録において指摘された事項についても、真摯に向き合って検討していただきたいと思います。
まとめになりますが、本日の和解の内容は、東広島市が、教員が自死した生徒に対して行った不適切な指導によって、当該生徒が自死に追い詰められる結果となったことを真摯に受け止め、謝罪し、今後、生徒の命が失われることが無いように、再発防止に『最大限』努力することを確約する、というものです。
東広島市や東広島市教育委員会、各学校においては、今後、この和解において約束した事項に沿って、再発防止に真摯に取り組んでいただくことを、強く希望します。
以上

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          裁判経過表(時系列)

証拠保全
(教育委員会)
証拠保全
(中学校)
個人情報開示請求 個人情報開示請求 損害賠償請求
(文書提出命令)
損害賠償請求
H27.3.13 申立て 申立て
H27.4.3 保全決定 保全決定
H27.4.8 保全実施 保全実施
H27.6.11 提訴
H27.9.28 地裁決定
⇒即時抗告
H27.10.2 地裁決定
⇒即時抗告
H28.4.25 一定の証拠が明らかに
H28.7.5 提訴
H28.7.14 一定の証拠が明らかに
H29.2.2 提訴
H29.7.11 文書提出命令
申立て
H29.8.9 地裁判決
⇒双方控訴
H30.3.28 地裁判決
H31.1.17 控訴審判決
R1.11.8 地裁決定
⇒即時抗告
R2.11.30 高裁決定
一部開示
⇒市特別抗告
R3.6.7 最高裁決定
(抗告棄却)
R4.8.17 教員2名尋問
R4.8.19 教員1名尋問
R4.9.30 遺族尋問
R4.11.7~ 和解協議スタート
R5.3.3 和解成立
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広島高等裁判所令和冗年(ラ)第176号文書提出命令申立て却下決定に対する抗告について,同裁判所が令和2年11月30日にした決定に対し,抗告人から抗告があった。よって,当裁判所は,次のとおり決定する。
主文
本件抗告を棄却する。

これによって、生徒の死亡にかかる調査委員会の行った生徒・教員アンケート及び聴取の記録が開示されることになった。


≪参考≫

今回開示された主な文書

〇 調査委委員会が実施した「アンケート集計結果 生徒アンケート」
〇 調査委委員会が実施した「アンケート集計結果 生徒アンケート(10月29日当日)」
〇 調査委委員会が実施した「アンケート集計結果(教員)」
〇 調査委員会が実施した「関係教職員への聴取記録」
〇 調査委員会が実施した「聴取承諾生徒への聴取記録」
〇「10月5日(金)文化祭準備中の指導から10月29日までの経緯」と題 する書面
〇 被告東広島市教育委員会青少年育成課において保管されている「2年■組野球部の生徒」から始まる文書(ただし,■部分はマスキングされてい ないもの)
〇 被告東広島市教育委員会青少年育成課において保管されている「2年■組野球部」から始まる文書(ただし,■部分はマスキングされていないもの)
〇 被告東広島市教育委員会青少年育成課において保管されている「2年■組平成24年10月30日(火)面談内容」と題する文書(ただし,■部分はマスキングされていないもの)

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