2023年2月11日付琉球新報デジタル

<社説>高2遺族が県提訴 「指導死」防止策まとめよ

わが子を失った遺族の訴えを県は厳粛に受け止めるべきだ。その上で、なぜ高校生が自死に追い込まれたのかを明らかにし、「指導死」防止策を早急にまとめてほしい。

2021年1月、運動系の部活に所属していた県立コザ高校2年の男子生徒が自ら命を絶った問題で、生徒の自死は教諭だった元顧問のパワーハラスメントが原因などとして、遺族が県に損害賠償を求め、那覇地裁に提訴した。
提訴の理由について遺族はコメントで「沖縄県に対して、『指導死』による息子の死を認めてもらいたいという気持ちからです。一人の指導者からの暴言や侮辱も明らかな体罰だということ、そして、指導という名の執拗(しつよう)なパワハラがあったときちんと認めてもらいたいと考えています」としている。さらに高校や管理職、県教育委員会に対しても責任を認めるよう求めた。
県や県教委、高校関係者は遺族の切実な声に真摯(しんし)に向き合い、事実関係を法廷で明らかにすべきだ。それを踏まえ責任の所在について明確な審判が示されるべきである。
訴状によると、元顧問は生徒を叱る際に「気持ち悪い」「キャプテンを辞めろ」などと発言。部活動外の時間に雑用を強要したり、携帯電話で緊急ではない連絡や指示をしたりした。暴言を伴う激しい叱責(しっせき)によって「自死を選択せざるを得ない心理状態に追い込まれた」と主張している。
これほどの暴言を浴びせられ、生徒は相当なダメージを負ったはずだ。訴状はさらに「元顧問が指導中に暴言等に及ぶことがあると把握していたが、何らの対処もせず、放置していた」として、学校長らの責任を厳しく指摘している。問題は生徒と元顧問の関係だけにとどまらない。周囲の教諭らはなぜ元顧問の行為を止めきれなかったのか検証すべきだ。
提訴を受け、玉城デニー知事は「(自死事案は)本来あってはならない事件であり非常に遺憾に思っている。訴状が届き次第、適切に対応していきたい」と述べた。それを言葉だけに終わらせてはならない。県は総務私学課内に第三者委員会を設置し、再調査を進めている。遺族が納得できる結果を出してほしい。
命を絶った生徒は極端な勝利至上主義の犠牲者だったとも言える。部活の在り方を考え直さなければならない。
コザ高校の出来事を受け、生徒自身が部活動のあるべき姿を協議する高校生検討委員会(県教育庁主管)が今月、「県高校部活生メッセージ2023」を発表した。指導者に対しては「私たちは人形ではない、理不尽な指導をやめてほしい」、学校に対しては「指導者を集めて、指導方法を改めて調査してほしい」と求めている。まっとうな要望であり、県教委の施策に反映されることが望ましい。
生徒の死を無にしてはならない。県は「指導死」の防止に全力を挙げるべきだ。

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

Post Navigation