平成29年10月4日中国新聞
「学校の姿勢に失望」
三原組み体操提訴の両親会見
両親
「真実を明らかにしたい」と会見で訴える生徒の両親
 三原市館町の広島大付属三原中3年の男子生徒=当時(14)=が昨年6月、運動会の組み体操に参加した2日後に死亡した問題で、同市の生徒の両親が3日、弁護士と市内で記者会見した。両親は「事実を隠そうとする学校の姿勢に失望した」と提訴決意の思いを語った。
 遺族側は組み体操の移動ピラミッド(3段騎馬)を解体する際に崩落があったと主張。昨年7月と12月、生徒が亡くなった経緯や原因調査への協力を保護者の会合で依頼したいと同校に要望した。事前に内容も通知したが、2度とも出席を拒否されたという。父の会社社長男性は「息子の最期に何かあったのか知りたか
った」と声をつまらせた。
 取材に対し同校は「騎馬が崩れていないのに、崩れた前提で保護者に話をしてもらうことはできない」と説明している。
 遺族は、学校が十分な安全対策を講じなかったとして今月1日、学校を運営する広島大(東広島市)に約9千万円の損害賠償を求める訴訟を広島地裁尾道支部に起こした。

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平成29年11月3日中国新聞
学校側「再調査しない」
三原組み体操問題生徒遺族に回答

 三原市館町の広島大付属三原中3年の男子生徒=当時(14)=が昨年6月、運動会の組み体操に参加した2日後に死亡した問題で、組み体操と死亡の因果関係の再調査を求める遺族に対
し、学校側は再調査の意向はないと伝えていたことが2日、分かった。取材に対し同校は、運動会後に調査をしたと説明している。
 同市の遺族は、生徒が参加した組み体操「移動ピラミッド」を解体する際、崩落する事故があったと主張。死亡から1年たった6月、「事実が明らかになっ
ていない」として質問状を同校に提出した。当日の指導教員の配置など27項目について見解を求め、再調査を求めた。
 同校の6月15日付の回答によると、「生徒の死亡を引き起こすような行動、状況はなかったと考えている」と説明。「今後、再調査は予定していない」とした。同校は生徒の死亡後、
組み体操に参加した生徒に聞き取りを実施。「崩れていなかった」との回答を得たとしている。
 取材に対し同校は「聞き取りをした生徒は既に卒業している。聞いたことは間違いないので再調査の必要性はない」と説明した。
 遺族は、学校が十分な安全対策を講じなかったとして今月1日、学校を運営する広島大(東広島市)に約9千万円の損害賠償を求める訴訟を広島地裁尾道支部に起こした。同校は「内容については訴状が手元にな
いので回答できない」としている。(中島大)

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平成29年11月2日中国新聞
広島大付属三原中 運動会2日後に生徒死亡
「組体操が原因」提訴
  遺族、安全措置問う
広大付属三原
 三原市館町の広島大付属三原中3年の男子生徒=当時(14)=が2016年6月に死亡したのは運動会の組み体操が原因として、同市の遺族が1日、学校を運営する広島大(東広島市)に約9千万円の損害賠償を求め広島地裁尾道支部に提訴した。生徒は運動会の2日後に死亡。学校が十分な安全対策を講じなかったと訴えている。(中島大)
 提訴したのは、父親の会社社長男性と家族。訴状によると、運動会は16年6月18日に同校グラウンドであり、生徒は組み体操などに参加した。20日未明に自宅
で体調が悪化。病院に運ばれ、同午前5時50分ごろ脳内出血で死亡した。
 遺族は、組み体操「移動ピラミッド」 (3段騎馬)で生徒が頭の痛みを訴えており、後頭部に衝撃が加わったと主張。演技後、ピラミッドが崩落したとし、「学校が演技内容と危
険性を十分認識しておらず、事故を未然に防ぐ措置を取っていなかった」と訴える。
 同校によると、ピラミッドは上段(1人)中段(2人)下段(6人)の3段。
下段が歩いて退場する。男子生徒は中段で四つんばいになっていた。
 同校は、生徒の死亡後、他の生徒から聞き取りを実施。中国新聞の取材に「ピラミッドは崩れなかった。事故とは考えていない」と説明した。17年6月の運動
会は移動ピラミッドを中止した。「危険性があった。遺族の心情にも配慮した」としている。

専門家は危険性指摘
国も昨年対策通知
移動ピラミッドのイメージ
「移動ピラミッド」のイメージ
 広島大付属三原中の運動会で実施された組み体操「移動ピラミッド」は、「動きがあるため危険性が高い」と指摘する専門家もいる。全国的に多発する組み体操事故を受け、国は昨年、各学校に安全対策の徹底を通知していた。
 学校事故の問題に詳しい名古屋大大学院の内田良准教授(教育社会学)は「生徒の死亡と組み体操の因果関係は分からない」とした上で、「国立の学校として玄夷して見直しをすべきだった」と話す。
 同校であった移動ピラミッドは高さは3段と極端に高くはないが、内田准教授は「土台が動くので崩れる可能性がより高くなる」と指摘。「段数が少ないから安全だという誤解が学校にあったのではないか」と推測する。
 スポーツ庁が2016年3月に出した通知は、タワーやピラミッドの組み体操は「確実に安全な状態で実施できるかどうかを確認し、できないと判断される場合は実施を見合わせる」とした。同庁によると、1969年度以降、組み体操で死亡した子どもは全国で9人、障害が残った子どもは92人いる。
 学校に男子生徒の死亡についての再調査を求めるのは、教育評論家の尾木直樹さん。「責任追及という意味ではなく、学校の行事で死亡の疑いがある場合は、遺族の立場に立って調査に入るべきだ」と話す。
 尾木さんは日本の学校で・の死亡事故が、他の先進国に比べて多い現状も指摘。
 「現場の学校や保護者も、子どもの安心安全を第一に考えてほしい」と訴えている。(中島大)

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平成29年10月29日河北新報社説
いじめ過去最多/痛みに向き合い早期対応を

 全国の小中高校などが2016年度に把握したいじめが32万件を超えた。文部科学省が公表した児童生徒の問題行動・不登校調査によると、前年度より約10万件増え、過去最多を更新した。
 「けんか」や「ふざけ合い」など小さなトラブルを広く見渡すよう文科省が促したことが増加の一因だという。
 いじめの兆候を早期に見つけ、対処することは深刻な事態を招かないための鍵だ。発見の手段はアンケートが5割超。本人の申し出は約18%で、積極的に言い出せない傾向に変わりはなかった。
 学校関係者は当事者らの話を丁寧に聞いて、問題の解決に導いてほしい。
 実際、全体の約90%が解消したというが、一件一件の経過をフォローすることが欠かせない。形を変えて再発したり、見逃されたりしているいじめは少なくないはず。
 肝心なことは、数値上の成果を上げることではない。子どもたちが発するSOSのサインに大人がどうやって気付けるかだ。その感度を高めることに全力を挙げてほしい。
 東北各県も今回、全県で増加した。子ども1000人当たりで見ると宮城が77.9件で全国3位の高水準だった。
山形が5位。青森、岩手の件数は前年度に比べ激増した。
 ここ数年、いじめによる中学生の自殺が各地で相次いだことと無関係ではあるまい。原発事故で福島から他県に避難した生徒が転校先でいじめに遭うケースも表面化した。
 学校現場の危機感が高まっているのなら、増加を肯定的に捉えることもできよう。
 しかし、自殺に至った事例などでは、学校や教育委員会が、いじめ被害を認識しながら適切に対応しなかったことが、度々問題になった。
 いじめ防止対策推進法は、子どもの心身に大きな被害を与えるいじめを「重大事態」と規定。発覚次第、直ちに調査に入るよう求めている。16年度の重大事態は全国で400件と増加の傾向にある。
 仙台市青葉区で今年4月にあった中2男子の自殺では、昨年行われたアンケートで本人がいじめを訴えていたにもかかわらず、校長は当初「その都度解消した」と、いじめとの関連を認めなかった。
 その後に教諭2人に体罰を受けていたことも発覚。重大事態を見過ごした学校や市教委と遺族との信頼関係は断たれ、第三者機関による調査すらいまだに始まっていない。
 いじめ根絶は、依然厳しい道のりと言わざるを得ない。多忙な学校現場だけで全てに対応できないのは明らかだ。
地域や外部団体との連携、カウンセラーなどサポート体制の強化は不可欠であろう。
 ただ、子どもの痛みに向き合う姿勢を欠いたままでは、いくら綿密なアンケートや防止策を講じても問題は先に進まない。
保護者や地域との信頼を築く要であることを学校や行政は肝に銘じるべきだ。

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平成29年10月29日社説
指導死 教室を地獄にしない

 子どもたちの可能性を伸ばすべき学校が、逆に未来を奪う。そんな過ちを、これ以上くり返してはならない。
 教師のいきすぎた指導が生徒を死に追いやる。遺族たちはそれを「指導死」と呼ぶ。
 福井県の中学校で今年3月、2年生の男子生徒が自死した。宿題の提出や生徒会活動の準備の遅れを、何度も強く叱られた末のことだった。
 有識者による調査報告書を読むと、学校側の対応には明らかに大きな問題があった。
 周囲が身震いするほど大声でどなる。副会長としてがんばっていた生徒会活動を「辞めてもいいよ」と突き放す。担任と副担任の双方が叱責一辺倒で、励まし役がいなかった。
 生徒は逃げ場を失った。どれだけ自尊心を踏みにじられ、無力感にさいなまれただろう。
 管理職や同僚の教員は、うすうす問題に気づきながら、自ら進んで解決に動かなかった。肝心な情報の共有も欠いていた。追いつめられた生徒が過呼吸状態になっても、「早退したい」と保健室を訪ねても、校長らに報告は届かなかった。
 生徒が身を置いていたのは、教室という名の地獄だったというほかない。
 だがこうしたゆがみは、この学校特有の問題ではない。「指導死」親の会などによると、この約30年間で、報道で確認できるだけで未遂9件を含めて約70件の指導死があり、いくつかの共通点があるという。
 本人に事実を確かめたり、言い分を聞いたりする手続きを踏まない。長い時間拘束する。複数で取り囲んで問い詰める。冤罪を生む取調室さながらだ。
 大半は、身体ではなく言葉による心への暴力だ。それは、教師ならだれでも加害者になりうることを物語る。
 文部科学省や各教育委員会は教員研修などを通じて、他の学校や地域にも事例を周知し、教訓の共有を図るべきだ。
 その際、遺族の理解を得る必要があるのは言うまでもない。調査報告書には、通常、被害生徒の名誉やプライバシーにかかわる要素が含まれる。遺族の声にしっかり耳を傾け、信頼関係を築くことが不可欠だ。
 文科省は、いじめを始めとする様々な問題に対応するため、スクールロイヤー(学校弁護士)の導入を検討している。
 求められるのは、学校の防波堤になることではない。家庭・地域と学校現場とを結ぶ架け橋としての役割だ。
事実に迫り、それに基づいて、最良の解決策を探ることに徹してほしい。

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平成29年10月28日毎日新聞
宮崎中1自殺 いじめと関係あり…第三者委が報告書

 宮崎市立中学1年の男子生徒がいじめを示唆するメモを残して2016年8月に自殺した問題で、市教委が設置した第三者委員会が、同級生らによるいじめがあったと認めたうえで自殺との因果関係もあったとする調査結果を盛り込んだ最終報告書をまとめたことが27日、関係者への取材で分かった。
 市教委や関係者によると、男子生徒は16年8月31日に自殺。自宅から生徒が書いたとみられるメモが見つかり、同級生らの名前とともに「たたかれた」などの記載があった。
 このため、市教委は「重大事態の疑いを払拭できない」として16年9月から全校生徒へのアンケートや聞き取り調査を実施。弁護士や大学教授らでつくる第三者委を設置して調べてきた。今年8月にまとめた中間報告書は、最終報告書でいじめが複数あったことを認める方針を示したが、自殺との因果関係については不明としていた。【塩月由香】

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平成29年10月27日東京新聞社説
福井中2自殺 寄り添う心を欠く怖さ

 教師は絶大な権力を持つ。一方的に振りかざせば、生徒は追い込まれてしまう。福井県池田町で三月、中学二年の男子がその犠牲になった。生徒に寄り添う心を欠いた指導は、教育とは呼べない。
 精神的に追い詰められ、逃げ場を奪われたその男子生徒は、生徒会室前の廊下にかばんを残して校舎三階から飛び降り自殺した。
 自殺の原因について、池田町の調査委員会の報告書は「担任、副担任の厳しい指導叱責にさらされ続けた生徒は、孤立感、絶望感を深めた」と結論付けた。生徒の痛みを理解できない教師像を強くうかがわせる。
 母親は手記に「『教員による陰険なイジメ』で息子は尊い命を失ったのだと感じています」とつづった。生徒の声なき訴えに、全国の教師は耳を傾けねばなるまい。
 一学年一学級の小規模校。隅々にまで目が行き届くはずの環境下で、なぜ悲劇は起きたのか。報告書からは、まるで教師の暴言を当たり前のようにみなす独善的な学校の様子が読み取れる。
 マラソン大会の準備が遅れ、担任は校門前で大声で怒鳴った。周りが身震いするくらいだったという。職員室の前で「おまえ辞めてもいいよ」と、生徒会役員だった生徒に大声を出しもした。
 忘れた宿題を執拗にとがめる副担任の前で、土下座しようとしたり、泣きだして過呼吸の症状が出たりしたこともあった。だが、管理職にも家族にも伝えなかった。
 担任、副担任の双方から厳しく責め立てられては、生徒は心のよりどころを失ってしまう。校長ら管理職も二人の振る舞いを知っていたという。適切な対応を怠った学校の責任は極めて重大だ。
 福井県は全国学力テストで常に上位の成績を上げる。それは評価できるとしても、学力重視に傾き過ぎて、子どもの思いや気持ち、特性を蔑ろにしていないか。
 教師の体罰や叱責の犠牲となった子の遺族らは「指導死」とも呼ぶ。二〇一二年に大阪市の高校生が部活動顧問から体罰を受け自殺した。二月には愛知県の中学生が「担任に人生を壊された」とのメモを残して命を絶った。
 文部科学省調査では、教職員との関係に悩んで自殺したとみられる小中高校生は〇七年度からの十年間で十六人に上る。
問題の担任は指導方法を助言した同僚に「手加減している」と返したという。
 子どもの身になって考え、感じる力が欠かせない。「指導死」という言葉などあってはならない。

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平成29年10月25日朝日新聞福井版
池田中の自殺 知事「胸痛む」 県教委は5人派遣

 池田町の町立池田中学校で今年3月に2年生の男子生徒が自殺した問題で、西川一誠知事は24日の定例会見で「非常に悲しいことであり、胸が痛む」と語った。その上で、「町がしっかり対応できるよう、県教委はバックアップしてほしい。
県も支援する」「学校や地域で動揺があってはいけない。安心して落ち着いた学校運営や授業ができるよう、県として可能な限り応援する」などと述べた。
     ◇
 県教委は23日から、池田中と町教委に計5人の教職員を派遣した。
 校長が19日に退職願を出して自宅待機になり、教頭が職務を代行している。学校の管理・運営を支えるため、県教委義務教育課の指導主事(50)と池田小学校の教諭(55)を派遣した。
 男子生徒を叱責した、当時の30代の副担任(国語の教諭)も17日から休んでいるため、義務教育課の指導主事(46)を送った。
 一方、町教委などには抗議の電話が殺到し、業務に支障が出ているため、県教委の職員2人を交代で派遣する。
(堀川敬部)

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平成29年10月25日河北新報
<仙台中学生自殺>あす半年 調査始まらず「専門委」の人選難航

仙台市青葉区の折立中2年の男子生徒(13)が教諭から体罰を受けた上、いじめを訴えて自殺してから26日で半年がたつ。市教委の第三者機関「いじめ問題専門委員会」は人選が難航し、背景などの調査は始まっていない。真相究明の第一歩すら踏み出せないまま時間だけが過ぎ、遺族は市教委に不信感を募らせている。
24日あった市議会いじめ問題等対策調査特別委員会で、市教委は専門委の人選を巡って遺族が要求していた臨時委員3人のうち、難航していた1人の人選が決まったことを報告。さらに遺族の求めに応じ、4人目の委員を加える方向で調整していることを明らかにした。
ただ、半年がたっても調査のスタートラインすら見えない現状に、市議から「異常事態と言わざるを得ない」といら立ちや不満の声が上がった。
臨時委員の選定は紆余(うよ)曲折をたどった。遺族は当初、自死予防の相談団体など3団体からの推薦を求めたものの、市教委は「信頼性や専門性を担保するには、職能団体からの選出が望ましい」と難色を示した。
次善の策として、遺族は仙台弁護士会からの推薦を要望。選ばれた委員候補は遺族が求めた弁護士ではなかったが、今回委員に決まった。市教委は「弁護士会がふさわしい人物を選んだ」と説明。遺族は疑問を抱きつつ、心を痛めている。
2014年9月に泉区館中、16年2月に同区南中山中で発生した生徒の自殺では、ともに発生から約2カ月後に調査が始まった。折立中の事案にかかる準備期間の長さが際立つ。
大津市の中学2年の男子生徒が11年にいじめを苦に自殺したケースで、同市教委の第三者委の委員長を務めた横山厳弁護士(大阪弁護士会)は「遺族の要望はできるだけ受け入れるべきだ。遺族らと特別な利害関係がない限り、第三者の立場は十分に担保できる」と指摘している。

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平成29年10月24日朝日新聞デジタル
「子の指導死、表面化は氷山の一角」 繰り返される悲劇
池田中調査報告書
福井県池田町立池田中学校で男子生徒が自殺した問題で、調査委員会がまとめた全57ページの調査報告書の写し

 福井県池田町で中学2年生の男子生徒が自殺した問題で、学校での指導がもとで同じように我が子を亡くした遺族も悲痛な思いを抱いている。繰り返される「指導死」。再発防止が課題だ。

■「他人事だったのか」
 「大人が押しつけるような教育は改めないといけないのに、現場は変わっていない」。大阪市立桜宮高校のバスケットボール部主将だった男子生徒(当時17)を自殺で亡くした父親(48)は、池田町で起きた中学生の自殺に胸を痛める。
 生徒は顧問から平手打ちや暴言を繰り返し受け、2012年12月に自殺した。顧問は懲戒免職となり、傷害と暴行罪で有罪に。遺族は市を相手に損害賠償を求める裁判を起こし、昨年2月に元顧問の暴行を自殺の原因と認める判決が出た。
こうした動きが大きく報道されてきた一方で、池田町の中学生は昨年10月ごろから担任や副担任から厳しい指導や叱責を受け、今年3月に自殺した。
 桜宮高校の生徒の父親は、5年近く前の出来事が「風化している。他の地域の教員には他人事だったのか」と感じる。
池田町の事案については、「当事者しかわからない面がある」と断った上で、「なぜ管理職ら周りが異常に気づき対応しなかったのか」と話す。
 大阪市教育委員会は再発防止に向けて13年、「生徒第一主義」「体罰の排除」という部活動の指針を示した。14年には体罰や暴力行為に対する懲戒処分の基準を改正。「授業で問題を解けない」「指示通りにプレーしない」など子どもに非がないのに体罰などをした場合は、より厳しく処分するようにした。
 今年3月には、「暴言」も懲戒処分の対象と明示。市教委の担当者は「暴言の抑止がその先にある体罰の抑止につながる」と話す。だが、体罰をしていた教諭が再び体罰で処分を受けるケースがあるなど、根絶されたとは言えない現状もある。

■価値観押しつけないで
 「『指導死』親の会」共同代表の大貫隆志さん(60)=東京=は「再発しないようにと活動してきたので、ものすごく悔しい」と肩を落とす。00年、中学2年生だった次男陵平さん(当時13)が自殺。学校でお菓子を食べたことで教師から1時間半にわたり叱られた翌日のことだった。
 08年に「親の会」を立ち上げ、生徒指導を原因とする自殺を「指導死」と名付け、社会に訴えてきた。大貫さんは、池田町教委が設置した調査委員会がまとめた報告書について「行き過ぎた指導を自殺の原因だとはっきり認めたことは画期的」と評価する。だが、再び子どもの命が失われたことに、「指導死が起きる恐れが学校で共有されていない。子ども一人ひとりの特性に合わせた接し方が求められている」と話す。
 教育評論家の武田さち子さんは「表面化している指導死は、氷山の一角」と指摘。背景に長時間労働などの教師の労働環境もあると分析する。「『生徒のため』と言いながら、教師が子どもをストレスのはけ口にしてしまう」。また、「生徒を効率よく管理し、学力やスポーツの成績を上げることが重視され、どうすれば一人一人の子どもが幸せになれるかを考える指導が難しい状況も問題」と話す。
 教育現場で指導死を防ぐにはどうしたらいいか。武田さんは「悪い行為をしかっても、人格は否定せず、教師側の価値観の押しつけや思い込みを慎む必要がある。指導中や指導後の子どもの様子に気をつけるほか、保護者との情報共有を徹底する必要がある」と提案する。

■一人で抱え込まないで
 教師の指導に悩む子どもや保護者はどうすればいいのか。不登校や引きこもりに関するニュースを発行する「不登校新聞」の
石井志昂(しこう)編集長(35)は「行政が設ける既存の相談窓口だけではなく、子どもや親が信じられる第三者機関を増やす
必要がある」と話す。
 子どもに異変を感じた親に向けては「子どもに心配していることを伝え、何があったのか率直にたずねてみる。子どもが話して
くれたら、最後まで聞く」とアドバイスする。「一人で抱え込まず、子どもにとって何が一番いいかを探してほしい」
 石井さんは13歳で不登校になった。「つらいなら、学校に無理して行く必要はない。僕は不登校になった後、気持ちを聞いて
くれる人に出会えて救われた。学校で見つけられなくても、そういう人は必ずいることを知ってほしい」(金子元希、長富由希子)

■「指導死」の定義(「指導死」親の会による)
①不適切な言動や暴力行為などを用いた「指導」を、教員から直接受けたり見聞きしたりすることにより、児童・生徒が精神的に
追い詰められ、死に至ること
②妥当性、教育的配慮を欠く中で、教員から独断的、場当たり的な制裁が加えられ、結果として児童・生徒が死に至ること
③長時間の身体の拘束や反省、謝罪、妥当性を欠いたペナルティーなどが強要され、それらへの精神的苦痛に耐えきれずに
児童・生徒が死に至ること
④暴行罪や傷害罪、児童虐待防止法での虐待に相当する教員の行為により、児童・生徒が死に至ること

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