平成29年8月17日朝日新聞東京本社版「声」
いじめ自殺、再調査遅すぎる
高校教員 宍倉潔(千葉県 54)
茨城県取手市で女子中学生が自殺した問題で、当時の調査の責任者だった市教育委員会の元教育部長らが両親に謝罪した。自殺したのは2年も前の話だ。今ごろ何の意味があるのか。
日記にはいじめをうかがわせる記述があったが、市教委は両親に「いじめは認められなかった」と報告していた。
しかし文部科学省から調査の見直しの検討を指導され、市に代わり県に新たな調査委員会を設置することになったという。
市教委が向いているのは生徒ではなく、文科省なのである。ご両親の怒りと嘆きはいかばかりだろうか。
市教委の報告をおかしいと感じた教師もいたかと思うが、現場の声が聞こえてこないことも気にかかる。県が新たに調査するというが、加害者はすでに中学を卒業しており、詳細に調べるには時間が経ちすぎている。
学校や教育委員会が迅速かつ適正に動いていたならば、いじめも自殺も防げていたかもしれない。そして、加害者への適切な指導もできたかもしれない。
今回、機能していなかった市教委の罪は極めて重い。何の処分も加えられないのであれば、教育委員会など不要である。