平成30年3月8日付毎日新聞
多治見中 部活の外部監督、生徒に暴行 夕方、土日に指導
暴行問題について記者会見する渡辺哲郎教育長(中央)ら=岐阜県多治見市役所で2018年3月7日、小林哲夫撮影
岐阜県多治見市立多治見中学校のバスケットボール部「ジュニアクラブ」で2016年9月、当時1年生の男子生徒が練習中、県バスケットボール協会から派遣されていたクラブ監督の60代男性から暴行を受けていたことが7日、市教育委員会への取材で分かった。男性は暴行罪で多治見簡裁から罰金の略式命令を受け、昨年2月に監督を辞任した。
市教委によると、生徒は学校の体育館で練習中、シュートが決まらず腹を立ててボールを壁に向けて蹴ったところ、監督の男性が生徒の尻を蹴り、顔や肩などを押したという。生徒は右手中指をけがするなど全治2週間の診断を受け、警察に被害届を出した。生徒はクラブをやめたが、病院で適応障害と診断され、精神的苦痛を受けたとして今年1月、男性に慰謝料120万円を求めて同簡裁に調停を申し立てた。
市教委によると、市では教員の負担軽減のため02年から、市立中全8校で運動部の競技ごとに、保護者が設置主体となる地域クラブを開設。始業前と放課後の午後5時までは顧問教諭が部活動として指導し、同5~7時と土・日曜はクラブとして地元の社会人らが指導している。男性は県バスケットボール協会の指導者ライセンスを所有していたが、協会は暴行後の昨年2月、男性を5年間のライセンス停止処分にした。
この日、市役所で記者会見した渡辺哲郎教育長は「クラブで起きた事故の責任はクラブ側にある」とした上で「市教委として学校と連携して注意深く支援し、再発防止に全力で取り組む」と述べた。【小林哲夫】
多治見市教委「責任はクラブ側にある」
暴行が発覚した多治見中の「ジュニアクラブ」は保護者が設置した任意団体との位置付けで、多治見市教委は「市が委託した団体でなく、責任はクラブ側にある」と強調した。だが、活動は学校内で行われ、部活動との連続性もあり、実質的には市が「外部委託」した形で続いてきた。責任を地域に「丸投げ」するような市の説明には識者からも疑問の声が上がる。
文部科学省は昨年12月、教員の働き方改革の緊急対策をまとめ、将来的に部活動の担い手を学校から地域に移すよう提言した。同市はこうした動きを先取りするように、夕方と週末の部活動を地域クラブに委ねる「外部委託化」を2002年から導入していた。
だが、民間指導者の研修制度はなく、地域によって質にばらつきがある。責任の所在があいまいなまま委託化が進むことに保護者の不安も大きいのが実情だ。市は今回の問題を受け「再発防止に取り組む」としたが、クラブ側に責任があるとして具体的な対策は明言していない。部活動問題に詳しい名古屋大の内田良准教授(教育社会学)は「教育委員会は地域に丸投げするのではなく、クラブへの関与は避けては通れない」と指摘している。【駒木智一】