平成30年11月2日付毎日新聞
いじめ第三者委「秘密会」に 被害者に非通知
埼玉県川口市の市立中学3年の男子生徒(15)が、いじめが原因で3回自殺を図り、不登校になっている問題で、市教育委員会が昨年11月、いじめ防止対策推進法に基づく第三者委員会を設置しながら「秘密会」とし、当事者の生徒側に約1年間、設置を説明していない異例の事態となっている。生徒側は市への不信感を強め、文部科学省も市の対応
を疑問視している。
文科省のガイドラインでは、いじめが背景にあると疑われる自殺や不登校などの重大事態があった場合、第三者委を設置して調査するとともに、調査前に委員の人選や調査方法などを被害者側に説明するよう求めている。
男子生徒の母親(43)によると、生徒は2016年4月に入学し、5月ごろからサッカー部の同級生や先輩に悪口を言われたり仲間外れにされたりした。同年9月と10月に自宅で2度首をつって一時意識不明となり、昨年4月には自宅近くのマンションから飛び降りて重傷を負った。
生徒は最初の自殺未遂の前、いじめ被害を訴える手紙を担任教諭に渡したが、学校側は、いじめはないとする調査結果を母親に伝えた。学校側が、いじめを認めたのは、生徒が飛び降り自殺を図った直後だった。
市教委は昨年11月に第三者委を設置し、同月中に3回の会合を開いたとしている。だが、同月の市教委定例会会議録には、茂呂修平教育長の「個人情報を含む内容のため秘密会で行いたい」との発言が載っているだけで委員の名前などは記されていない。市教委は「大ごとにしたくないという生徒側の意向を踏まえた」というが、生徒側は否定している。
市教委は先月30日の定例会見で、委員は弁護士、医師、学識経験者の3人だと明かしたが、他のいじめ問題の第三者委では公表している委員の名前などは発表しなかった。
生徒側には今後説明するとしている。
母親は「委員会を設置したという説明もなく、息子への聞き取り調査も行われていない。これで、きちんとした調査ができるのか疑問だ」と批判。文科省児童生徒課は「第三者委の設置では、委員の選定や調査方法などについて家族とよく相談し、納得してもらう必要がある。市教委の対応は配慮が足りなかったと言わざるを得ない」と指摘した。【鴇沢哲雄】
「聞いたことない」
いじめ問題に取り組むNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」の小森美登里理事の話 第三者委員会を秘密会にするのは聞いたことがない。これでは調査自体の信頼性が疑われる。第三者委の設置を生徒側に説明していないなら、委員会をスタートさせてはいけない。