平成30年11月23日読売新聞
中3自殺未遂で第三者委、母「何一つ説明ない」
埼玉県川口市立中学校3年の男子生徒(15)が入学当初からいじめを受け、2017年4月に飛び降り自殺を図った問題で、市教育委員会が20日、記者会見し、対応の経緯を説明した。市教委指導課の岩田直代課長は、生徒が3度目の自殺未遂をした約半年後の同年11月に第三者調査委員会を設置し、母親(43)に伝えたと説明。
しかし母親や生徒は「『第三者委員会』という言葉さえ言われたことがない」とするなど、複数の食い違いが生じている。
生徒は16年4月の入学当初からいじめを受け、同年9、10月の2度、自宅で首つり自殺を図ったほか、17年4月には自宅近くのマンション3階から飛び降り、左大腿骨頸部を骨折するなどの重傷を負い、現在車いすで生活している。
読売新聞のこれまでの取材に対し、母親は、最初の自殺未遂をする前の16年9月初めから、生徒が自分でいじめの内容を記した手紙数枚を担任らに渡していたと証言。
しかし岩田課長は「保護者が副担任に一括して手渡した。担任が『しっかり見守っていくので大丈夫。安心して来るように』と生徒に話した」と説明した。母親は、「連絡が来たことはない」としている。
また、市教委は最初の自殺未遂で重大事態として第三者調査委員会を設置しなかった理由について、「校内調査の結果、いじめの事案が確認できなかったため」と説明。
山田浩一学校教育部長は16年10月に2回目の自殺を図った後も、「複合的な原因が考えられた」として重大事態としなかったとした。
市教委は第三者調査委員会の委員が、埼玉学園大学教授で臨床心理士の小山望委員長ら3人であると公表。しかし、委員の氏名を生徒側に伝えていないことも明らかにした。理由について「本人や保護者への聞き取りが必要となる時期に説明することから非公開としていた」と述べた。
山田部長は会見で「結果は誠に遺憾で申し訳ない」と述べたが、「学校、市教委は最善の方法を考えて対策していた」と対応の不手際は認めなかった。
一方、生徒の母親は20日、コメントを発表。「市教委は同時期に別のいじめ問題でも、文部科学省や県教育委員会から繰り返し指導されていたにもかかわらず、息子の件は何も対応はしなかった。最初の自殺未遂から重大事態として第三者委員会で調査をしていれば、車いすで生活することもなかった」とこれまでの市教委などの対応を批判した。
第三者調査委員会についても、「設置したとされた日から1年以上たち、何一つ説明や報告もされない。不可解なことばかりなので、何を言っても信じることなどできない」と不信感をあらわにしている。