2023年2月5日 付北海道新聞

旭川中2いじめ 元校長、当時の学校の対応は「適切」「本人に聞き取りできなかった」

 【旭川】旭川市内の公園で2021年3月に凍死した中学2年広瀬爽彩(さあや)さん=当時(14)=がいじめ被害にあった19年当時に通っていた中学校の元校長(63)が、この問題が発覚してから初めて北海道新聞のインタビューに答えた。広瀬さんの失踪から13日で2年―。元校長は市教委第三者委が認定したいじめについて、「学校でも確認し、いじめとして報告しようと思っていたが、本人への聞き取りなどができなかった」などと学校が認定できなかった理由を説明。当時の学校の対応を「適切」とした上で、市教委への不信感も示した。
■川入水「自殺未遂でない」

 元校長は20年3月に退職し、現在は無職。1月下旬に旭川市内で2回にわたって取材に答えた。

旭川市教委などに提出した文書を前にインタビューに答える元校長。「広瀬さんの気持ちを受け止められず、痛恨の極み」と悔やむ

旭川市教委などに提出した文書を前にインタビューに答える元校長。「広瀬さんの気持ちを受け止められず、痛恨の極み」と悔やむ

19年6月に広瀬さんが川で自殺を図ったことについて、元校長は川が浅いなどの理由で「自殺未遂ではない」との認識を示した。その後の学校の対応については、複数の教員が本人の心のケアや加害生徒への指導を行っていたと説明した。
 第三者委がまとめた最終報告書は「学校の組織的対応はなく、法の趣旨に反する」としていた。元校長は「それは市教委の言い分。実際には私が全部指示を出した。何人の教員が動き、どれだけの労力を使ったか」と反論した。

 学校がいじめの認定に至らなかった理由について、加害者側から聞き取りはできていたが、広瀬さんが入院していた病院側から川で自殺を図った経緯を本人に聴取しないよう求められたという。広瀬さんが19年8月に転校したため「本人に確認できなかった」と弁解した。

広瀬さんの遺体が発見された公園内に設置された献花台=1月27日

広瀬さんの遺体が発見された公園内に設置された献花台=1月27日

同9月には一連の問題について地元月刊誌が「女子生徒が『いじめ』で自殺未遂」と報じたため、学校は「ありもしないことを書かれた」などと記事の内容を否定する文書を全校生徒の保護者に配布した。
 この文書について、元校長は「いじめを否定したのではなく、川での自殺未遂を否定する趣旨だった」と説明。この後、問題への対応が市教委の主導となったこともあり、「いじめとする報告が、保留になった」と釈明した。
 文部科学省によると、本人への聴取ができなくても保護者や周囲の調査からいじめと認知することは可能。最終報告書は「問題は法制度の理解不足にある」と学校と市教委の対応を批判している。(綱島康之、村田亮)
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