2022年11月23日付朝日新聞デジタル

先輩からの行きすぎた指導「シメ」の実態調査 熊本工の高1自死問題

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熊本工業高校の生徒の自死について、会見で経緯を説明する県教委の担当者=2022年11月7日午後4時58分、熊本市中央区の熊本県庁、大貫聡子撮影
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第三者委員会の初会合であいさつする白石伸一教育長=2022年11月16日午後6時0分、熊本市中央区、大貫聡子撮影
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熊本工業高校の生徒の自死をめぐり調査方法を話し合う県教育委員会の第三者委員会=2022年11月16日午後6時5分、熊本市中央区、長妻昭明撮影

 熊本県立熊本工業高校1年の生徒(16)が10月に自死した問題で、生徒が部活動の人間関係の悩みを相談していたほか、一部の保護者から「シメ」と呼ばれる先輩から後輩への行きすぎた指導を指摘する声も上がっている。学校が実態を調べている。

 県教育委員会によると、学校は11月8日に保護者説明会を開催。生徒が部活動の人間関係について顧問などに相談していたことなどから、県教委が設置する第三者委員会でいじめの有無や自死との関連などを調べることを報告した。

 その中で、「生徒が所属していた部活動でシメがあった。それが影響したのではないか」と発言した保護者がいたという。学校はこの問題が起きる前から、先輩からの厳しい指導で精神的苦痛を受けている部員が複数いることを把握していたとして「あしき伝統が残っていたら改善しなければならない」と答えたという。

 学校は、シメの実態を把握するため、部員全員にアンケートを実施している。結果はいじめの有無を調べている第三者委員会に報告し、委員会がシメと自死との関連についても調べる方針。

 熊本工の保護者が指摘した部活動での「シメ」は、別の公立高の元生徒が部の先輩から丸刈りを強制されたなどとして県に損害賠償を求めた裁判でも原告側が問題として指摘していた。「シメ」とはどんなものなのか。熊本工で自死した生徒と同じ部に、10年ほど前に所属していた女性が取材に語った。

げた箱前に呼び出され…泣く部員も

女性は、入学前からこの部活動の指導は厳しく、「シメ」もあると聞いていた。しかし、厳しい環境に身を置くことで上達すると考え、入部した。

入ったらすぐに先輩からあいさつの仕方など部のルールを教えられた。ルールを破れば、部活動終了後に昇降口のげた箱前に呼び出され、先輩に一対一で注意された。この注意の口調が厳しく、泣く部員が多くいた。1カ月で複数の新入部員が退部した。

同級生の中には、1人呼び出されて複数の先輩から注意を受けた部員もいた。女性は「根性をたたき直すために、後輩1人に対して先輩が大人数で注意したり、後輩を泣かせたりすることがあった。

これがいわゆるシメだと思う」と話した。

先輩が後輩を個別に呼び出すため、部員間でもどれほど厳しい指導があったかは分からない。

部内にはこの指導を問題視する意見はなく、「むしろ厳しい指導があってこその熊本工業という声が多くあった」と語る。

女性も「私はシメを受けたことがなかったが、当時は部を強くするためには必要な指導だと思っていた」と振り返る。一方「シメに苦しむ部員が多くいるのであれば、今すぐなくして欲しい」と訴えた。(長妻昭明)

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