平成28年3月31日 神戸新聞

川西高2いじめ訴訟判決 自殺との関連認める

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神戸地方裁判所に入る男子生徒の両親=30日午後、神戸市中央区

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 2012年9月、川西市の県立高校2年生男子が自殺し、両親が元同級生や県などを相手取り損害賠償を求めた裁判の判決公判が開かれた神戸地裁101号法廷=30日午後1時8分、神戸市中央区

 

 2012年9月、兵庫県川西市の県立高校2年の男子生徒=当時(17)=が自宅で自殺したのはいじめが原因として、両親が当時の同級生や担任教諭、校長ら6人と県を相手に計約8860万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、神戸地裁であった。伊良原恵吾裁判長はいじめと自殺の関連を認めたが、自殺の予見は難しかったとした。賠償責任は生徒が受けた精神的苦痛にとどまるなどとして同級生3人と

県に計210万円の支払いを命じた。

 同級生3人は男子生徒を「ムシ」と呼び、椅子の上に虫を置いたことなどについて「からかいのつもりだった」としたが、伊良原裁判長は「人格を深く傷付け、大きな精神的苦痛を生じさせた」としていじめと断定した。

 「いじめではないと認識していた」とした担任教諭の主張に対しては、いじめが大勢の生徒の前で展開されたことなどから「漫然と発見する措置を講じなかった」と指摘。校長も「教諭を指導、助言した形跡がない」として2人の安全配慮義務違反を認めた。

 一連のいじめと自殺の関連については「合理的な疑いを挟む余地はない」とする一方、極端な暴行が伴ういじめではなかったとして自殺の予見は困難だったと判断。ただし、いじめは執ようで生徒への慰謝料が認められるとした。

 また生徒の自殺後、指導部長が在校生に対して「遺族は全然理解してくれない」と発言したことも不適切だったと指摘。担任教諭らのいじめの対応を含めて賠償責任は学校設置主の県にあるとした。

 両親は判決後の会見で「少しは息子の思いが伝わったが、満足できない」と語り、県教委は「判決内容を検討し、今後の対応を考えたい」とコメントした。

両親「息子にどう報告すれば…」 高2いじめ判決

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判決後、男子生徒の写真を手に会見に臨む両親=30日午後、神戸市中央区(撮影・大山伸一郎)

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 兵庫県川西市の県立高校2年の男子生徒=当時(17)=の自殺を巡る30日の神戸地裁判決は、元同級生3人の行為をいじめと認定したが、「いじめの内容は自殺を予測できるほどではなかった」と結論づけた。

判決後に記者会見した両親は、全国でいじめによるとみられる自殺が相次いでいることに触れ、「言葉の暴力が人を死に追い詰めることを、もっと考えてほしい」と厳しい表情で訴えた。

 会見で母親(57)は「息子にどう報告すればいいのか…」と戸惑った表情を見せた。

 息子を「ムシ」と呼び続け、「汚い」「エキスが付く」などといじめ続けた元同級生。そして、いじめを把握し、対応できたはずの元担任教諭。監督すべきだった元校長。判決は、彼らのいじめに対する責任を認めた。

 しかし、判決は暴力を伴わないいじめの内容などから、予見可能性は否定。母親は「高校生にもなって、クラスみんなの前で『ムシ』と呼ばれ続けることが、どれだけ傷つくことか」とハンカチで目頭を押さえた。

「きっと、殴られたり、お金を取られたりすることよりももっと、精神的に追い詰められただろう」と息子を思いやった。

 息子を亡くしてから3年半。朝は遺影に「おはよう」と声を掛け、夜は晩ご飯を供える。まだ、死を受け入れられない。時折、息子がいじめられている夢を見ることがあるという。

 男子生徒の自殺後、当時の生徒指導部長が「遺族は理解してくれない」と発言するなど、学校側の事後対応にも不信が募った。両親は「学校側が寄り添ってくれていれば、提訴することはなかった」と振り返る。

 父親(64)は今後の対応について、「判決文をしっかりと読んでから考えたい」と、疲れ切った様子で話した。

(上田勇紀)

 ■学校でのいじめや体罰などで子どもを失った遺族らでつくる「全国学校事故・事件を語る会」代表世話人 

内海千春さん(57)=兵庫県たつの市=の話

 いじめと自殺の関連を認めたことは評価できる。「いじめと自殺を関連づけることは困難」とした県教委の第三者委員会よりも一歩踏み込んだ。県教委は「いじめによる自殺」という事実を重く受け止めるべきだ。ただし、当時の同級生や担任が「自殺を予見できなかった」という判断は時代錯誤。全国で10代の自殺が相次いでおり、もはや自殺は特別なことではない。また、自殺の多くは肉体的苦痛よりも、精神的に追い詰められて起こる。暴力が伴わなかったからといって、予見できないというのはおかしい。

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