平成28年11月5日 朝日新聞広島版

生徒と教師の信頼関係築けず 中3自殺で第三者委

写真・図版

最後の調査検討委員会を開いた後に会見する第三者委員会のメンバー=府中町本町1丁目

 

 府中町立府中緑ケ丘中学校3年の男子生徒(当時15)が誤った万引き記録を基にした進路指導を受けた後に自殺した問題で、町教委は4日、第三者委員会がまとめた報告書の全文を報道陣に公開した。

「生徒との信頼関係を丁寧に築いていく姿勢が不十分」とし、生徒指導への姿勢や推薦基準の機械的な運用など多くの課題を示した。

 個人情報を伏した報告書によると、第三者委は男子生徒と同学年の生徒・保護者にアンケートを実施。

生徒指導について「丁寧に細かく指導してくださった」と肯定的なものもあったが、「頭ごなしに物事を決めつけ生徒の話を聞こうともしない先生がいた」「先生方は『生徒はうそつきだから』と平気で言っていた」などの意見があった。

 第三者委員会は3日夜、25回目の調査検討委員会を開催。委員長の古賀一博・広島大大学院教授が町教委の高杉良知教育長に報告書を手渡した後に会見した。

 報告書は、志望する私立高への推薦が認められず、生徒と担任の間に適切なコミュニケーションがなかったことが男子生徒の自殺のきっかけと指摘した。副委員長の阿形恒秀・鳴門教育大大学院教授は「『どうせ言っても先生は聞いてくれない』という(亡くなった)生徒の言葉が象徴している」と説明した。

 また、入学後に触法行為があれば一律に認めないと昨年11月に推薦基準を変更したことについて、報告書は法律で14歳未満の行為は有責性がないとしていることを指摘。「少年法の理念の無理解」と断じた。

 最後に古賀委員長は「教員たちは今回の答申を共有して自分たちの問題ととらえてほしい」と意識改革を求めた。報告書を受け、県教育委員会の下崎邦明教育長は「このような悲しいことが二度と起こらないよう全力で取り組みを進める」とのコメントを出した。

     ◇

 府中緑ケ丘中は5月に推薦の方針を改めた。志望理由が明確か、学習や部活に意欲的かなどの観点から、生徒に努力や成長がみられるかを踏まえ、総合的に判断しているという。(泉田洋平、加治隼人、久保田侑暉)

 

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