【9月26日付 毎日新聞】
総合教育会議でいじめ対策などについて話し合う越市長(左から2人目)と教育委員ら(7月下旬、大津市で)

改正地方教育行政法が4月に施行され、約60年ぶりに教育委員会制度が見直されて半年近くがたった。
大津市のいじめ自殺問題をきっかけに行われた改革で、教委は変わったのか。各地の現状を追う。
異例の頻度
2011年、いじめを受けていた市立中学2年の男子生徒が自殺し、重要資料を公開しないなど市教委の姿勢が批判を浴びた大津市。新制度で設置が義務づけられた総合教育会議を、ほぼ2週間に1回の頻度で開催している。年に2~3回を予定する自治体が多い中、異例だ。
7月下旬、今年度8回目となる総合教育会議が市役所で開かれた。その約半月前に岩手県矢巾町でいじめ被害を訴えていた中学生が自殺した問題について、教育委員が「校長が報告を受けていなかったというが、言える環境がつくれていなかったことが問題」と指摘。別の委員が「大津市のいじめ対応もまだ完成していない」と市内での対策の必要性を訴えた。越直美市長(40)が「教員1人ではなく、チーム、学校でしっかりと対応してほしい」と述べ、教員だけが抱え込まず、市立学校で組織的な対応を徹底していくことになった。
大津市では、制度改正前から市長と教委の協議の場を独自に設け、昨年度は約20回議論。その積み重ねをもとに、法改正で首長が策定することになった「大綱」を今年7月末に完成させ、いじめ克服や英語教育の強化を掲げた。
越市長は「会議を重ねるごとに、市長対教委という図式ではなく、一人一人が意見を述べ合う形になってきた」と手応えを感じている。

教育長人事難航
一方、新制度で誕生した新「教育長」に、大津市ではまだ移行していない。
これまでの制度では、教育行政の事務局の責任者である教育長(常勤)と、合議制の執行機関である教委の代表者の教育委員長(非常勤)がおり、「2人の『長』がいると、誰が責任者かわかりにくい」と批判があった。
新教育長が就任すると、教育委員長は廃止される。
現在の教育長は、越市長の秘書課長も務めた元市職員の井上佳子さん(54)。昨年3月、前教育長が体調不良を理由に突然辞任、後任人事が難航し、同11月に抜てきされた。教育委員長は桶谷守・京都教育大教授(64)。「教員の経験もあり井上教育長をサポートできる」(市教委幹部)と当面、今年4月時点で教育長が任期途中の場合移行を猶予される経過措置を利用することになった。
桶谷教育委員長は「教育の専門知識と行政経験の両方を持つ常勤の責任者を見つけるのは難しい」と新制度の課題を指摘。その上で、「市長と教委が一体となり教育行政を進めていくことで補っていきたい」と話す。
亡くなった大津市の男子生徒の父親(50)は5月、総合教育会議に招かれ、「教育行政の透明化を図ってほしい」と訴えた。父親はこの約半年を振り返り、「制度ができてもいじめ自殺がなくならず、首長と教委の連携による速やかな対応もできていない。教委は首長に常に情報を明らかにし、首長も何か問題があったときに知らなかったではすまされないと自覚する必要がある」と語った。

首長の意見反映させる仕組み

地方教育行政法の改正で大きく変わった点は、教育委員会で担ってきた教育行政に、首長の意見を反映させるための仕組みができたことだ。教育委員会と首長が教育施策について議論する総合教育会議の義務化のほか、教委を代表するとともに事務局の指揮・監督もする新教育長についても首長が任命する。
ただ、総合教育会議の頻度などは定められておらず、教育行政にどこまで首長が関与するかは裁量に任されている。文部科学省の調査では、6月1日時点で総合教育会議をすでに開いていた自治体は都道府県・政令市の68.7%、区市町村では39.8%。一方で、開催未定とした自治体は全体の21.8%であった。
新教育長についても、任期途中の教育長が辞任して新教育長が就任した自治体もある一方で、経過措置を利用して旧体制のままの自治体もある。同調査では、新教育長が誕生したのは都道府県・政令市で38.8%、区市町村で19.4%だった。

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