平成30年6月5日付朝日新聞デジタル
「体罰見せられ」高2自殺 弁護士会が「人権侵害」警告
愛知県立刈谷工業高校2年の山田恭平さん(当時16)が2011年に自殺した問題で、愛知県弁護士会が、山田さんが所属していた野球部の副部長だった教諭に対し、「人権侵害にあたる」として、警告書を出していたことがわかった。警告書は5月23日付。遺族が県弁護士会に、人権救済を申し立てていた。
警告書では、副部長が、11年の試験期間中、禁止されたトランプで遊んでいた複数の部員を平手打ちしたり、足を蹴ったりしたのは体罰で、暴行罪に該当する犯罪行為、人権侵害だとした。また、山田さんら体罰を見せられた部員に対しても、体罰を受けた部員と同様、心身に深刻な影響を与えるため、人権侵害と認定。「二度とこのような人権侵害行為を行わないよう」にと警告した。
さらに、同日付で刈谷工高に要望書も出した。「不適切な指導を未然に防ぐ」「自殺行為が発生した場合は原因を迅速に調査し、結果を親、教員、教育委員会などと共有する」ことなどを求めた。
山田さんの母優美子さんは「信頼される団体から厳しい意見が出たことの意味は大きい。学校側もこれからの子どもたちのためにこの声をしっかり受け止めてほしい」と話す。
県教育委員会は「体罰はあってはならないこと。体罰禁止について、教職員への徹底周知を図っているが、引き続き生徒の人権を尊重した適切な指導に努めたい」とコメントした。
県弁護士会によると、人権救済の申し立ては年間50~100件ほどあり、警告書を出したのは03年以来で異例だという。
県の第三者調査委員会は14年2月、「山田さんが所属する野球部内で体罰を見聞きしたことなどでうつ病を発症し、自殺の一因となった」と結論づけた。(日高奈緒)