2022年11月9日付北海道新聞

倶知安の不登校「担任が体罰、暴言」 訴え3年、結論示さぬ町教委 道開示文書ほぼ黒塗り

情報公開請求で開示された町教委の報告書や、教諭の処分を決める道教委内の審査記録。ほぼ黒塗りで、両親は詳細を把握できない状況が続く
情報公開請求で開示された町教委の報告書や、教諭の処分を決める道教委内の審査記録。ほぼ黒塗りで、両親は詳細を把握できない状況が続く

 2018~19年に町内の小学校に通っていた女児が、担任教諭に無理やり嫌いな給食を食べさせられたり、継続的な体罰や暴言などを受けたりした結果、不登校になり、精神疾患を発症したとして両親が事実関係の確認と説明を求め続けている。町教委は教諭への

聴取で給食を強制的に食べさせた事実を認める一方、体罰や暴言などの有無については、問題発覚から3年以上たっても結論が示されていないといい、両親は憤りと不信感を募らせている。

両親によると、女児は小学2年だった19年9月、嫌いなマヨネーズ入りサラダなどを食べられず、担任教諭から教室前方の席に移され、タイマーで時間を制限され、サラダの完食を強要された。女児は口に入れたが、飲み込めずに吐き出してしまった。女児がマヨネーズが嫌いなことは、入学時の調査票に記していた。

女児はその後、登校できなくなり、病院で不安神経症の診断を受け、服薬治療が必要になった。不登校は、教諭が翌春に別の学校に移るまで約半年間続いた。

この間、両親は女児から、授業に臨む態度などを理由に教室後方に一定時間立たされる、教諭の近くの席に1人で座らされる、「頭が良いからっていいと思うな」「泣いても無駄」

と言われるなどの行為を小1の時から繰り返し受けたと明かされた。両親は「不登校や精神疾患は継続的な体罰、暴言が原因」とみて町教委に調査と説明を求めた。

町教委は教諭への聞き取りで給食を強制的に食べさせた件は認め、両親に謝罪。

20年3月、道教委に報告書を提出し教諭は同10月、懲戒処分未満の文書訓告の措置を受けた。だが、継続的な体罰や暴言などの有無は両親が町教委に要望書を出すなど再三確認を求めたが、いまだに説明がないという。道に報告書などの情報公開請求もしたが、21年

3月の開示はほぼ黒塗りで具体的内容や教諭への措置の根拠は分からなかった。

町教委の村井満教育長は北海道新聞の取材に、教諭への聞き取りや学校が児童を対象に行ったアンケートの結果として、教諭が女児を含む複数の児童を一定時間立たせる指導や、女児を教諭の近くに座らせる指導をしたことを認めた。教諭は暴言については「記憶にない」と話しているという。報告書の詳細は「開示する権限がない」とした。

村井教育長は、両親にまだ総括的な説明をしていない理由として、21年3月、道教委に報告書を再提出したことを挙げた。両親の要望を受け、両親の事実認識などを追記したといい、「教諭の処分が変わるかどうかなど、道教委の結論を待って対応したい」と話す。

これに対し、道教委は報告書への対応について「個別の案件には答えられない」(総務課)としている。

現在、女児は小5で別の学校に通うが、自身の証言が認められないままで、精神的なつらさを抱え続けているという。両親は、教諭による児童への暴言を保護者の指摘から3カ月未満の9月に公表、謝罪した滋賀県野洲市教委の対応との違いも踏まえ「なぜ3年以上たっても説明

がないのか。この問題で結論が出ないと家族は前に進めない」と訴えている。(須藤真哉)

早期の説明 町教委の責任

千葉大の大野英彦教授(教育実践)の話 市町村立学校の教員の服務監督権は市町村教育委員会にあり、児童に対する教員の指導に問題があれば、当事者である保護者に説明する責任がある。教員の処分をどうするかは任命権者の道教委が判断することであり、それとは別に調べた事実を保護者に説明することは、町教委として対応があってしかるべきだ。今回の事案では時間がかかりすぎている感は否めず、できる限り早期に結論を示すことが望ましい。

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