令和5年2月18日付東京新聞

八王子中2自死「学校管理下のいじめ確認できない」死亡見舞金を支給せず 日本スポーツ振興センター

東京都八王子市で2018年8月、市立中学2年永石陽菜(ひな)さん=当時(13)=が自殺した問題で、災害共済給付制度を運営する日本スポーツ振興センター(本部・東京都)が「学校の管理下で行われたいじめが確認できない」などとして、死亡見舞金の不支給を決めていたことが、関係者への取材で分かった。

 

◆市の調査結果と異なる結論…その理由は?

永石陽菜さん=両親提供

永石陽菜さん=両親提供© 東京新聞 提供

 市の再調査委員会は21年に「いじめと学校の対応のまずさが主な要因」とする報告書を公表しており、遺族は「市の調査結果と異なる」と強く反発している。

 市の再調査では、交流サイト(SNS)上でのいじめを認めた上で「中学校の管理下の出来事が主な要因」とした上で、「学校側が問題を放置したことも自殺の要因」としていた。

 これに対し、センター側は「SNS上のいじめの詳しい日時が不明で、学校の管理下で行われた事実が確認できなかった」と指摘。学校側の対応も「体罰や暴言などがない」として、安全な学校生活を妨げる要因ではないと認定した。

 遺族の代理人弁護士は「市の再調査の報告書では、部活動の現場での態度による心理的ないじめも挙げられている」として、SNSによるいじめだけを判断材料としていることを問題視。さらに「学校がいじめを調査しなかったことも大きな問題とされた」とも指摘し、不支給決定の判断に疑問を呈している。

 永石さんの父、洋さん(61)は「市は学校の管理下でのいじめと認めているのに、なぜ覆らせるのか。失望している」と話した。

 永石さんの自殺を巡っては19年8月、市教委が委嘱した第三者調査部会は、いじめと自殺の直接の因果関係を否定。遺族側の申し立てで市は再調査委員会を設置し、21年5月に「いじめと学校の対応のまずさが自殺の主な要因」と結論付けていた。(布施谷航)

 災害共済給付制度 日本スポーツ振興センターが運営。幼稚園や小中学校、高校などの管理下で児童や生徒が負傷したり死亡したりした場合に、医療費、障害見舞金、死亡見舞金を支給する。「学校などの管理下」は、授業中や保育中、部活動などの課外指導中、休憩時間、通学・通園中などを指す。

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

Post Navigation