平成29年12月30日 神戸新聞
六甲アイランド高生転落 停学より一般的「特別指導」運用に各校苦悩
「学校関係者以外立入禁止」の看板が校門に立つ神戸市立六甲アイランド高校=29日午後、神戸市東灘区向洋町中4
神戸市東灘区の市立六甲アイランド高校で1年の男子生徒が校舎5階から転落して重体となってから、29日で1週間が過ぎた。
男子生徒は会員制交流サイト(SNS)上のトラブルを巡り、転落直前の2日間、クラスとは別室で教諭からの説諭や反省文を書く
などの指導を長時間受けていた。こうした指導は大半の高校が実施しているが、生徒が自殺した原因の一つとされる事例もあり、
運用の難しさが浮かび上がる。(広畑千春、井上 駿)
神戸市教育委員会によると、同校では今月発覚したツイッター上のトラブルについて、男子生徒を含む数人が別々の個室で指導を受けていた。男子生徒に対する聞き取りや説諭は21、22日に30分~1時間。反省文書きや自習などを含めると21日は7時間半、22日は8時間45分に上り、他の生徒より長かったという。
男子生徒は22日、別室で担任との面談や自習をする「学年指導」を25、26日に半日ずつ受けると決まり、保護者の来校を待っていた午後5時ごろ、敷地内で倒れているのが見つかった。校舎5階から転落したとみられている。市教委は今回の指導を「比較的軽いもの」と説明する一方、「全体として長時間だったことは否定できない」としている。
同校関係者によると、同校では月に数回、「学年指導」より重い「特別指導」として、問題行動を起こした生徒に対し別室で行動を説明させたり、反省文や日記を書かせたりしていた。長いときは2週間程度に及び、「指導が厳しく、落ち込む生徒もいた」という。
文科省の調査(2009年)では約82%の高校が、学校教育法施行規則が定める退学・停学・訓告の懲戒処分以外に、謹慎や
別室指導など「事実上の懲戒」を実施していた。兵庫県内の公立高教員によると、同校のような学年指導や特別指導は一般的で、
各校が内規を設け、生徒指導担当教員らが会議で指導内容を決めることが多いという。
県立高教員の一人は「かつて停学が多かったが、進学や進級に影響が大きく、今は別室指導が一般的」と話す。不適切な写真の
投稿などSNS上のトラブルが増えており、「事実解明が難しく指導が長時間化している。『炎上』すれば名前や学校名が拡散し、
生徒や学校に多大な影響が及ぶ。厳しく指導せざるを得ない」と苦悩をにじませる。
文科省は内規で定めた別室指導を認め、適切な運用を求めているが、指導内容については各校任せというのが実情。2015年
に奈良県で男子高校生が自殺した事案では、漫然と別室指導を繰り返したことが原因の一つとされている。
京都精華大学の住友剛教授(教育学)は「指導の方法や内容の妥当性だけでなく、日ごろの男子生徒の状況や、学校が何を
問題としてどのような配慮をしながら指導したのかなど、背景から丁寧に調べ、公表することが不可欠」と指摘している。