2021年2月10日付神戸新聞NEXT
加古川・中2自殺訴訟 きょう10日「口頭弁論」
「これまでのさまざまな第三者委の報告書には、背景調査や再発防止策は示されているが、事態をどう収束させるかについては書かれていない」。学校での事故やいじめ、体罰などで子どもを亡くした遺族らでつくる「全国学校事故・事件を語る会」代表世話人の内海千春さん(61)は話す。
16年9月、女子生徒がいじめをほのめかすメモを残して自殺したことを受け、加古川市教育委員会はいじめ防止対策推進法に基づく重大事態と判断し、第三者委を設置。第三者委は17年12月に報告書をまとめ、学級や部活動でのいじめが自殺の原因と認定した。
しかしその後、学校が「紛失した」としていた、いじめの存在を示すメモを部活動の顧問らが破棄していたことが判明。さらに、事実関係などについて話し合う中で、市が「法的責任はない」という姿勢に固執したことなどから、遺族は「深く傷つけられた」として訴訟に踏み切った。
これに対し岡田康裕市長は、「メモ自体の存在は隠していない」と隠蔽(いんぺい)を否定。「司法の場で判定してもらわざるを得ない」とした。
いじめの調査に関わる遺族らへの対応について、文部科学省は「寄り添いながら調査を進める」と指針で示す程度。内海さんは、日航ジャンボ機墜落事故(1985年)や尼崎JR脱線事故(2005年)で加害企業が置いた遺族担当者を例に挙げ、「被害者、加害者の本音を聞くコーディネーター的な専門職を行政に設置してほしい」と望む。
さらに内海さんは「学校や教育委員会は沈静化にのみ躍起になり、遺族の怒りの裏にある実態を見ようとしない」と指摘。「行政に厳しい発言をするのは非難ではなく、『助けてくれ』という叫び。遺族は救済すべき人ということを忘れないで」と訴えている。