平成29年12月15日毎日新聞東京本社版

取手いじめ 友の自殺「学校は隠した」 元同級生が不信感

取手いじめ

美帆さん(仮名)は、誕生日に中島菜保子さんからプレゼントされたネックレスを大事に持っている。奥の写真は生前の菜保子さん

=茨城県取手市で、玉腰美那子撮影

 

2015年11月に茨城県取手市立中3年の中島菜保子さん(当時15歳)がいじめへの苦しみを日記に残して自殺した問題で、20日に開かれる県の第三者調査委員会を前に、同級生だった4人が毎日新聞の取材に応じた。学校や市教育委員会が当時、「受験への配慮」を理由に自殺の事実などを伏せたまま生徒らに調査した上で「いじめはなかった」と結論づけたことについて、「隠さず言ってほしかった」と異口同音に語った。2年が過ぎても、大人たちへの不信感を拭えないという。【玉腰美那子】

 

うわさあったのに

取材に応じたのは、菜保子さんと同級生だった友人の女子生徒4人で、いずれも現在は高校2年の17歳。

菜保子さんと中3で同じクラスだった令佳さん=仮名=は、亡くなった翌日の全校集会を鮮明に覚えている。生徒の間では「自殺した子がいる」とのうわさが流れていたが、校長は菜保子さんの自殺を「思いがけない突然の死」と伏せた。「受験に配慮したのかもしれないけど、隠されると気になる」と語り、友人として菜保子さんの死に向き合うため「きちんと言ってほしかった」と言う。

市教委の聞き取り調査は自殺から1~2カ月後にあったが、ここでも自殺を伏せての「カウンセリング」名目だった。自宅が近所の実香さん=仮名=は、「最近学校どう」「菜保子さん変わったことなかった」と遠回しに聞かれた。しかし、生徒たちの間では既に「いじめがあった」との空気が広がっていた。「いじめを認めたくないから隠したんだと思う。先生たちにもそう感じた」と語った。

中2の時に同じクラスだった美帆さん=仮名=は、菜保子さんから誕生日に贈られたネックレスを大切に持っている。自宅で自殺を図った11月10日、菜保子さんが学校で泣いているのを偶然見かけた。「どうしたの」と声を掛けたが、返事はなく、それが最後に見た姿となった。「(自殺を伏せた)市教委の聞き取りでは、いじめのことが思いつかなかった」と悔やんでいる。

幼なじみだった加奈さん=仮名=も「死んでしまうほど苦しんでいたとは」と自分を責めるように言った。加奈さんは思う。

「ああしていれば、こうしていればと考える。すごく悲しい」

 

取手市立中3女子生徒の自殺

茨城県取手市で2015年11月10日、市立中3年の中島菜保子さん(当時15歳)が自宅で自殺を図り、翌日死亡した。

市教委は「受験への配慮」を理由に自殺の事実を伏せて調査し、いじめ防止対策推進法の「重大事態」に該当しないと結論。

市教委は第三者調査委を設置したが、両親が「公平な調査を」と反発し、今年6月に第三者委は解散した。県が新たに第三者委を設置し、原因を調べる。

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