平成29年7月19日 NHK
学校などの初動の調査で「いじめなし」が3分の1に
いじめが原因と見られる子どもの自殺は、平成25年にいじめを防ぐための法律が施行されたあとも全国で33件起きています。このうち、法律に基づいて第三者委員会が原因の調査を終えたおよそ3分の1のケースが、学校や教育委員会による初動の調査で「いじめの事実はなかった」とされていたことがNHKの取材でわかりました。
6年前、滋賀県大津市で起きた中学生のいじめ自殺では、当初、学校がいじめの事実を認めなかったことなどから、これを受けて整備されたいじめ対策推進法では、いじめによる重大な被害が起きた場合、学校や教育委員会による初動の調査でいじめの疑いがあれば第三者委員会が調査することが盛り込まれました。
文部科学省によりますと、この法律が施行された平成25年以降、いじめが原因と見られる子どもの自殺は全国で33件に上ります。このうち、第三者委員会による調査が終わった14件のうち、およそ3分の1にあたる5件で、学校や教育委員会が行った初動の調査の段階では「いじめの事実はなかった」とされていたことがNHKの取材でわかりました。
このうち、おととし7月、青森県八戸市で女子生徒が亡くなったケースでは、学校側は生徒がからかわれていた事実をアンケートで把握しながら、遺族に対していじめはなかったとしました。しかし、第三者委員会は、生徒に対する嫌がらせや無視などのいじめがあったと認め、その判断を覆しました。
生徒の母親は「娘をよく見ていたはずの学校の先生が、もっと真剣に調べてくれたらいじめの事実はわかったはずだ」と話しています。
「事実認め対応することこそが子どものために」
青森県八戸市の高校生だった大森七海は、3年前、みずから命を絶ちました。
七海さんの母親は、同級生から七海さんに対して無視や嫌がらせなどのいじめがあったのではないかと学校に申し出ました。しかし、学校側は調査の結果、いじめはなかったと説明したといいます。母親は「学校の先生たちは、子どもたちへの配慮を理由に自身を守っているのではないかと思った」と話しました。
その後、第三者委員会が行った調査で、七海さんへのいじめがあったことがわかり、最終的に自殺との因果関係も一部、認められました。母親は「学校にとっていじめがあった事実を認めて対応することこそが子どもたちのためになると思います」と話していました。
評論家・尾木直樹さん「法律が現場に浸透せず」
いじめの問題に詳しい教育評論家の尾木直樹さんは「4年前にいじめ防止対策推進法が施行されてからも、学校や教育委員会がいじめの事実を認めないことが続いているのは、法律の趣旨が理解されず、全く現場に浸透していないからだ」と批判しています。
そのうえで、「文部科学省はガイドラインを作るだけでなく、現場の教師が法律の趣旨を認識しているかチェックする必要がある。何よりも、学校で行われる調査は真相を明らかにしてほしいと願う遺族のためにあるのだということをしっかりと心にとめてほしい」と話しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170719/k10011064511000.html