【旭川】広瀬爽彩さんが2019年に通っていた中学校の元校長(63)は一連のいじめを認定する考えがあったとしながら、広瀬さんが川で自殺を図った行動は、自傷行為にとどまり、さらにいじめが原因ではないと認識していたことを明らかにした。広瀬さんの死について「道義的責任は感じる」としながら、法的責任はないと主張。いじめ問題に詳しい池坊短期大(京都)の桶谷守学長は「問題と向き合い、事実や対応を自ら検証する姿勢が必要だ」と批判する。
 「あの浅さで自殺未遂はできない」。インタビューで元校長が最も強い憤りを表したのは、19年6月に広瀬さんが川に入ったことが市教委第三者委の最終報告書などで自殺未遂とされている点だ。川の水深が膝下程度だったことから元校長は「広瀬さんに自殺の意図はなかった」と話した。
 ただ、最終報告書では、広瀬さんが当時「もう死にます」などと話した後に「川の中に入って膝下まで水につかる」自殺未遂と記載している。この点について元校長は「自傷行為ではあるが、自殺未遂ではない。さまざまな理由で『死にたい』と言う子はいっぱいいる」と述べ、当時はいじめによる自殺未遂との認識もなかったことを強調した。
 また、元校長は最終報告書を「一度も読んでいない」と明かした。理由として、第三者委が遺族側の意見も踏まえ、表現を調整した経緯などから、内容が「公平中立ではない」などと指摘した。
 元校長ら退職者は現行制度上、懲戒処分の対象外となり、今後、市教委が処分することはないが、教頭や当時の担任など現役教員は対象となる。
 「学校としてはきちんと対応していたので、教頭や担任ら学校の教員について(法的責任は)ないと思っている。一番、爽彩さんのことを考えて対応したのは学校だ」。元校長はこう話す一方で、「道義的責任は感じる。居場所を探していた爽彩さんの気持ちを受け止められなかったのが痛恨の極み」と述べた。
 元校長は昨年11月、市教委幹部と面会。その際に提出した文書には、「(市教委は)責任逃れに終始し、絶望に近い感情を抱いた」と記載し、市教委の対応を強く批判した。
 桶谷学長は元校長にいじめ防止対策推進法に関する理解が欠如しているとの認識を示し、「法に定められている通り、被害者に寄り添うのが基本だ」と語った。
 元校長は、当時の資料などがないため、説明責任を果たすための記者会見などをする考えはないとしている。(綱島康之、村田亮)
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