2021年2月9日朝日新聞デジタル
小6自殺、いじめ認定するも「主因でない」 第三者委
千葉県野田市の市立小学校6年の男児が2019年7月に自殺した問題で、いじめの有無などを調べていた第三者委員会「市いじめ問題対策委員会」は8日、いじめがあったことは認定したものの、自殺の主な原因とは判断しない調査結果を市教育長に答申した。目立つ児童への支援を教職員が積極的に行いがちだと問題提起し、「SOSを出すことが苦手な子への支援のあり方」を念頭に置いた再発防止策を要望した。
調査報告書などによると、男児は19年7月13日、午前中の土曜授業に出席した後、自宅で自殺した。遺族が調査を望んだこともあり、市教育委員会は「重大事態」として第三者委を同月に設置。男児が通っていた小学校の6年生約130人や担任らに聞き取りをするなど調査を続けてきた。
男児は6年生の時、別の児童から机を離されたり、机の上に教科書を立てて壁をつくられたりしたほか、プリントなどを投げるようにして渡されたりした。
男児が授業で音読をつっかえると、この児童に「練習してないじゃん」と言われた。男児は下校時、友人に「おれは暴言をはかれている」などと話し、帰宅後も母親にそう話した、とされる。男児はこの日、自殺した。
第三者委は男児が受けた行動について「高学年の学校生活ではしばしば見られるありふれた行為」とする一方で、「心理的な影響を与える行為」ととらえ、累積が相当のストレスになったのではと指摘。男児は友人に「嫌だ、ひと泡ふかせてやりたい」と話しており、いじめがあったと認定した。
一方で、どの時点で自殺を決意したかを結論づける情報は得られなかったという。男児は規律を守り思いやりがある性格だが、いじめについて相談するべき内容かどうか分からず1人で苦しみ、周囲に心境の重大さが伝わらなかったことが考えられると説明。机を離されるなどしたことはストレスになりうるが、第三者委は「いじめだけが、明らかに自殺の要因であるとは判断できなかった」と結論づけた。
学校では、教師が机を離された行為に気付き、「つけなさい」と声かけをしたものの、男児の抱えていた悩みに気付かなかったという。
第三者委は、いじめ防止対策の環境が学校で整っていたとしたうえで「それが十分に機能していたとは言い難い」と指摘し、子どもたちの行動について「なぜ」と思うことが、子どもたちの関係を把握できる可能性について言及。「いじめ防止の授業」の実施や、教職員への自殺予防の研修の実施などを提言した。
男児の両親は市教委に対し、「調査報告書の内容については納得していない」と話し、再調査を望んでいるという。佐藤裕・市教育長は「実効性のある再発防止に全力で取り組む」と話している。(石原剛文)