2016年11月8日 中国新聞社

町教委が設けた第三者委員会メンバー

中田憲吾弁護士(56)

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「男子生徒と教員との間に十分な信頼関係ができていなかったのが悔やまれる」と強調する中田弁護士

1959年、広島市南区生まれ。 92年に弁護士登録し、広島弁護士会副会長などを歴任。数多くの少年事件の弁護人などを担当してきた。 NPO法人「子ども虐待ホットライン広島」の副理事長も務める。

生徒・教員 信頼関係欠く

誤った万引記録に基づく進路指導後に広島県府中町の府中緑ケ丘中3年の男子生徒(15)が昨年12月に自殺した問題で、町教委が設けた第三者委員会が、進路指導や学校運営に問題があったとする報告書をまとめた。どう総括し、再発防止に向けて何に取り組むべきなのか。委員会のメンバーや保護者、学識経験者たちに思いを聞いた。

-第三者委として原因究明は十分にできましたか。

男子生徒は周囲に悩みを打ち明けていなかった。原因の特定が困難な中、さまざまな立場の委員が関係者に当時の状況を聞き取り、分析した。もう少し関係者への聞き取りが必要との意見もあったが、スピード感も大事。役割は果たせた。

-最大の問題点とは。

いくつかの不運が重なった結果と言えるが、男子生徒と担任教員の間に信頼関係が不足していたことが大きい。担任は、優秀だと思っていた男子生徒が1年時に万引をしたと記載された資料を見て、驚いた。自然な会話ができ、事実をきちんと確認し合う関係であれば、誤った記載であることに気付けたのではないか。

-男子生徒が反論せず、誰にも相談したりしなかったのはなぜでしょうか。

あまり自分の意見は言わないなど、本人の性格もあるだろうが、「どうせ言っても、先生は聞いてくれない」と本人が家族に漏らしていたように、学校への不信感があったことも影響しているのかもしれない。

-報告書では、私立高入試での専願・推薦基準の変更が自殺のきっかけと指摘しています。

1年生の時に触法行為をした場合も推薦・専願が不可と決め」たことについては到底、理解できない。専願・推薦をちらつかせて生徒指導することに陥りがちで、とても生徒を見て指導しているとはいえない。こうした指導が、生徒との信頼関係を欠く背景にあったと言わざるを得ない。

-なぜ、こうした基準変更をしたのでしょうか。

基準の変更に関わった3年生担当の教員に聞き取りをした結果、経験のある特定の教員たちの意見が決定に影響していたことが分かった。突然の基準変更に疑問を感じ、悩んでいた教員はいたが、これらの意見は受け入れられなかった。聴取した当時の校長は「その判断を尊重した」と説明したが、もっと慎重に評価し、自分の意見を述べるべきではなかったか。組織の合意形成や校長のりリダーシップにも問題があった。

-再発防止として特に重要と思うことは何ですか。

学校は外部と閉ざされがちだ。学校生活に悩みを抱える生徒や、組織運営に不満のある教員たちが気軽に相談できる相談窓口を外部に設けるべきだろう。

(門戸隆彦)

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