2016年11月12日 中国新聞社

遺族の代理人を務める弁護士

武井直宏さん(45)

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「先生が生徒を信じて向き合う当たり前の学校になってほしい」と両親の願いを代弁する武井弁護士
1971年、広島市南区生まれ。約10年間、東京都内の会社に勤めた後,2010年に弁護士登録。広島弁護士会の刑事弁護センター委員会や民事介入暴力問題対策委員会の委
員を務めている。

生徒と向き合う学校に

-広島県府中町教委が設けた
第三者委員会の報告書に対し、自殺した男子生徒の両親の受け止めは。
誤った万引の記録を基にした一連の進路指導や当時の学校運営の問題が亡くなった背景にあったと、客観的に認められた点については、自分たちの思いをくんでくれたと受け入れている。ただ、自殺を防げなかった学校への不信感は別次元の話。なぜ息子が死を選んだのかと苦しんでいる。
-両親の疑問が深まった点はありますか。
自殺のきっかけとも指摘されている私立校入試の専願・推薦基準が変更された経緯だ。昨年11月、推薦を出すかどうかを判断する非行歴を例年の「3年時のみ」から「1~3年時」に広げた。受験が間近に迫る段階でなぜ変更に踏み切ったのか。教員間の議論で、例年通りを求める意見は聞き入れられず強引に決定した感が否めない。どう決まったのか、改めて説明してほしいと願っている。
-基準の変更は生徒や両親にとってショックが大きかったのでしょうか。
生徒は入念に受験の準備をしていた。学校からも応援されて、自分なりに信じた受験のプランがあった。それがはしごを外された形だ。にもかかわらず、その後、生徒の希望に寄り添った進路指導や、心のケアがなされた形跡はないこともとても残念に思っている。
―生徒は学校に対し、どのような思いを持っていたのでしょうか。
生徒は「どうせ先生に言っても聞いてくれない」と両親に漏らしていた。相談しても仕方がないと思っていた節がある。それだけに、両親は廊下での進路指導のやりとりも不自然だと感じている。どういう気持ちで、どんな口調で生徒に万引のことを確認したのか。今でも直接教員に聞きたいとの思いが強い。
-両親は学校に何を望んでいますか。
息子が特別な生徒ではなく、当時の学校の状況であれば、誰にでも起こり得たことだと、個々の教員が心にとどめてほしいと願っている。息子のことをきちんと見続けてくれる体制があれば、中1の時の万引の記録に強い疑問を抱いたはず。生徒が悩みを先生に打ち明け、先生も生徒を信じて向き合う。そんな当たり前の学校になってほしいと望んでいる。
(有岡英俊)=おわり

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