3月11日中国新聞社より
府中町中3自殺
生徒指導 内規沿わず
別人の詳細確認・面談なし
広島県府中町立府中緑ケ丘中3年の男子生徒(15)が 昨年12月、2年前の誤った万引記録に基づく進路指導 の後に自殺した問題で、当時実際に万引した別の生徒への対応を、生徒指導上の内規通りしていなかったことが10日までに分かった。発生翌日に教諭間で口頭の報告をノートなどに書かないままパソコンで入力した
ことが誤認につながり、誤認に気付いた後も元データは修正されなかった。
(長久豪佑、根石大輔)
同中の調査報告書によると、2013年10月6日の日曜日、コンビニエンスストアから、当時1年の生徒2人が万引したとの通報が学校にあった。出勤していた教諭が店に行き、2人が事実を認めたため、保護者と一緒に謝罪した。
このため、教諭は「すでに解決している」という認識を持ち、(詳細な)事実確認▽生徒指導主事、生徒、保護者、担任、学年主任を交えた5者面談▽奉仕活動1など内規に定められている対応をしなかった。翌7日に生徒指導担当と担任教諭に口頭で報告。生徒指導担当は生徒指導ノートなどに記録しないまま事実関係
をパソコンに入力し、名前を取り違えた。生徒指導担当は、7日に発生した教師への校内暴力の対応を優先し、万引への指導を怠った。 さらに8日、週1回の生徒指導会議でパソコンのデータを基に作った資料を配布。出席した教諭から名前が誤っているとの指摘があった。しかし、生徒指導記録の整理・`保管の在り方に
関する明確な取り決めはなく、誤ったデータは修正されなかった。資料は会議のたびに記録を追加し、配布。
12月3日までの約2ヵ月間、誤った名前のまま配られ続けた。
同中では生徒指導の会議は校長や教頭、生徒指導主事、学年主任たちが参加するよう定められている。しかし、校長と当時の教頭は13年度、一度も参加しなかった。調査報告書は「管理職が関与しない状況だったため、個人の判断で対応や指導をしなければならなかった」とまとめている。
自殺生徒実名
掲載資料配布
黒塗り忘れ報道陣に
広島県府中町の府中緑ヶ丘中3年の男子生徒が昨年12月、進路指導後に自殺した問題で、同中が10日、亡くなった男子生徒の実名が載ったままの資料を報道陣に配布した。報道陣からの但旧一で気付いたという。町教委は報道各社に連絡を取り、資料を破棄するか、実名を伏せて報道するよう要請した。
資料は再発防止を目的に同日、全校生徒に配布したアンケート用紙や依頼文などA4用紙4枚。報道陣に配る際、男子生徒の実名が記された部分を黒塗りにしたが、計12力所のうち1ヵ所を塗り忘れていた。資料は報道陣の求めに応じて配布された。
文科省月内に中間報告
検証へ特別チーム初会合
広島県府中町の中学3年の男子生徒が自殺した問題で、文部科学省は10日、原因究明や再発防止策を考える特別チームを省内に設け、初会合を開いた。事実関係の検証や進路指導の在り方を盛り込んだ中間報告を今月中にまとめることを確認した。
馳浩文科相は、会合の冒頭で「当事者意識を持ち、事実関係を徹底的に調査する。背景を分析し、再発防止策に生かす」と強調した。
ことし半ばまでに、最終的な報告を取りまとめる方向性も示した。
チームは義家弘介副大臣をはじめとする7人で構成。学校や町教委の対応を検証し、情報管理の在り方などを議論する。義家氏は、誤った万引記録に基づく進路指導について「(学校側に)なれ合いや認識の甘さがあったのではないか」と指摘した。
また同省は現地への職員の駐在を当面続け、第三者委員会の委員の人選などを支援する。
(山本和明)
調査報告「事実か疑問」
遺族側弁護士両親意向反映されず
自殺した男子生徒の遺族の代理人を務める武井直宏弁護士は10日、学校が2月末にまとめた調査報告の内容の一部について「事実関係が本当かどうか疑念があ
る。両親の意向が反映されたものではない」との見解を示した。
広島市中区で報道陣に語つた。調査報告には、担任教諭と万引歴があると誤認された生徒が教室前の廊下で5回の「面談」をしたことや、会話の内容が記され
ている。武井弁護士は、やりとりについて「事実かどうか疑問を持っている。担任は万引という言葉自体、本当に使ったのか。仮に事実でも表情や全体の流れが
明らかでない」と指摘。「そもそも廊下でのやりとり。本当の意味での進路面談と言えるのか」と学校側の指導の在り方を批判した。
さらに「両親は万引について心当たりすらない。学校と生徒が知っていて、親が知らない万引なんてあるのか。なぜ生徒は『僕は違います』と言えなかったのか。両親はそれら一つ一つを疑問に思い、悩んでいる」と述べた。両親は生徒の死後、同級生の受験への影響を考え、親しい友人にも真実を伏せていたという。
また学校側の調査能力に限界があるとして、公正中立な第三者奢貝会で調査するよう重ねて要請。町教委や学校に対し「生徒の名誉と尊厳を回復する措置を取
ってほしい」と求めた。゛
(長久豪佑)