平成30年2月28日付朝日新聞愛知版
指導死とは 遺族らが名古屋でシンポジウム
シンポジウムで「指導死」について意見交換をする遺族や有識者ら=25日、名古屋市
教師のいきすぎた指導が子どもを死に追いやる「指導死」について考えるシンポジウム「『指導死』はなぜ起こるのか」が初めて名古屋市で開かれた。
遺族らは「学校や社会は、子どもの生きる権利について真剣に考えてほしい」と訴えた。
シンポジウムは、子どもを亡くした遺族らでつくる「指導死」親の会が主催し、25日に名古屋市中村区のウインクあいちであった。2011年6月、野球部内で体罰を見聞きしたことが一因で県立刈谷工業高校2年の次男(当時16)が自殺した山田優美子さん(48)や有識者ら6人が意見交換した。
山田さんは、お悔やみに訪れた野球部員の保護者から「子どもは殴られて鍛えられる」などと体罰を容認するような言葉をかけられたという。「親も体罰を指導と受け入れ、悪いことを悪いと言えない風潮がある」と指摘した。
高校1年で自殺した男子生徒(当時16)の遺族も北海道から参加した。生徒とのメールでの悪口がきっかけでトラブルとなり、教師に叱責された翌日に命を絶ったという。「遺族はせめて何があったかを知り、再発防止につなげたい」と求めた。
教育評論家の武田さち子さんが新聞記事などをもとに調べたところ、1989年以降、指導死とみられる自殺は未遂を含め74件あったという。日本福祉大の野尻紀恵准教授(教育福祉学)は、スクールソーシャルワーカー(SSW)を育てる立場から、「学校での権力者は教師であり、子どもは絶対的弱者。
スクールソーシャルワーカーが学校に入り、権力構造を崩さなければならない」と指摘した。
シンポジウムでは、教師による厳しい叱責が原因で、中学2年の男子生徒(当時14)が昨年3月に自殺した福井県池田町の事例も検討した。野尻准教授は、福井県教育委員会のリーフレットに「きたえる教育」と書かれていることや、愛知県内の中学校でPTAの反対により生徒のスニーカーの色を白以外に変更できなかったことを紹介。「こうした社会の要請に応えようと、教師の指導がより厳しくなる場合がある。指導されればされるほど子どもが苦しくなる。
子どもの視点に立つことが大事だ」と話した。(小若理恵)
指導死の定義
・不適切な言動や暴力などを用いた「指導」を、教員から受けたり見聞きしたりすることによって、児童生徒が精神的に追いつめられ死に至ること・妥当性、教育的配慮を欠く中で、教員から独断的、場当たり的な制裁が加えられ、結果として児童生徒が死に至ること
・長時間の身体の拘束や、反省や謝罪、妥当性を欠いたペナルティーなどが強要され、その精神的苦痛により児童生徒が死に至ること
・「暴行罪」や「傷害罪」、児童虐待防止法での「虐待」に相当する教員の行為により、児童生徒が死に至ること
※「指導死」親の会による