平成29年6月8日河北新報
横浜・原発いじめ問題 生徒「放置せずサポートを」
記者会見する母親=横浜市中区で
東京電力福島第一原発事故で福島県から横浜市に避難した男子生徒(13)のいじめ問題で、生徒の母親が七日、市内で記者会見するとともに、生徒のコメントを発表した。全国ではいじめの被害者側に寄り添っていないとされる教育委員会の対応が相次いでおり、生徒は「全国のどこでも、子どもを放置せず、精神的なサポートをして欲しい」と求めた。 (志村彰太)
会見とコメントの発表は「子どもも保護者も長くつらい日々を過ごしたが、やっと総括できるタイミングになった」(代理人弁護士)として行われた。
弁護士らによると、一連の問題で、生徒が小学校時代にいじめを訴えても学校側は聞き入れてくれなかったが、昨年十一月の問題発覚を受け、林文子市長と岡田優子教育長は五月末に、生徒と直接会って謝罪。市教育委員会は再発防止策を作り、いじめ防止基本方針も改定中だ。
会見で母親は「いろんな人たちが味方になり、励ましてくれた」と感謝し「市にはやってほしいことをやってもらった。
今後、全国の手本になる思いで取り組んでほしい」と述べた。
生徒もコメントで「教育長や市長が、言いたいことを聞く体制になってくれたこと、聞く耳を持ってくれたことが今、うれしい」
と対応の変化を評価した。
ただ全国では、茨城県取手市の市立中学三年の女子生徒が自殺した問題で、原因を調べていた第三者調査委員会の調査に偏りがあるとして、遺族の申し出で解散が決まるなど、教育委員会の対応の問題点を指摘するニュースが続く。
母親によると、生徒は全国各地のいじめ自殺のニュースが流れると「何でだよ。つらいなら学校行かなくていいんだよ」と、悔しさをにじませるような会話をするという。母親は「全国のいじめは学校や教委の理不尽な対応が多く、被害者が報われていない状況が続いている。被害者側に寄り添った対応をしてほしい」と求めた。
生徒は現在、前向きな気持ちでフリースクールに通っており、一カ月ほど前にようやく一人で出掛けられるようになったという。母親は「フリースクールも楽しいと言っている。息子が生きるという選択をしてくれてありがとうの思いしかない」と涙を見せた。
一方で「外に出る時、加害者に遭遇するのではという恐怖心やトラウマはまだある」とし、横浜市に精神面でのサポートを求めた。生徒の今後について「ゆっくり人生を歩んでほしい。無理せず、自分のペースでいろんなことを乗り越えてくれれば」と話した。
◆「いじめ防止基本方針」改定原案 12日から市民意見募集
横浜市教育委員会は、今回の男子生徒のいじめ問題を受けて見直し中の「いじめ防止基本方針」改定原案の市民意見募集(パブリックコメント)を、十二日~七月二十八日に行う。
改定原案の主な変更点は「いじめを広く捉える」と明記。教員や学校だけに任せず、警察や市長部局との連携などを具体的に記述した。また、いじめが解消したと判断する根拠に「いじめ行為が少なくとも三カ月以上やんでいる」「児童生徒が心身の苦痛を感じていない」の二点を挙げた。
特に配慮が必要な児童生徒として「障害がある」「海外からの帰国者、外国につながりがある」「性同一性障害」「東日本大震災、原発事故の避難者」などの例を記した。集まった意見と市教委の考え方は九月にHPに掲載し、九月末に確定させる。(志村彰太)
◇男子生徒のコメント全文
七日公表された男子生徒のコメントは次の通り。(表記は原文のまま)
教育長や市長が、言いたいことを聞く体制になってくれたこと、聞く耳をもってくれたことが今、うれしいです。
「ちょっと話しましょうか」ということが、これまではなかったので。
今後も、全国のどこでも、子どもを放置せず、精神的なサポートをして欲しいです。加害者も、被害者も、平等に、です。
今回、僕は加害者側がサポートされていて、被害者側がサポートされていないような気持ちになりました。
これまで、僕は、いじめで自殺することを止めるきっかけになればと思って、生きているうちに発信していけばいじめが減ることにもつながる、自分の行動でいじめが減る!と信じて、教育長や市長への手紙を書くなど、できるだけ自分の言葉を発信してきました。
手紙やメッセージをくれた方々、電話や署名活動をしてくれた方々、協力してくれた議員の先生方をはじめ、その他にも僕が把握できていなくてもいろいろなところで応援してくださった皆さん、行動して頂きありがとうございました。