平成30年12月21日付朝日新聞熊本版
熊本・高3自殺、中間報告 同級生からの暴言認定
熊本県北部の県立高校3年の女子生徒(当時17)が5月、いじめをうかがわせる遺書を残して自殺した問題で、県教委の第三者機関が20日、中間報告をまとめた。
授業中に複数の生徒が「死ねばいい」などと発言していたと認定した。ただ、いじめかどうかについては触れなかった。
県いじめ防止対策審議会(会長=岩永靖・九州ルーテル学院大准教授)が県教育長に答申し、女子生徒の遺族に報告した。
県教委によると、女子生徒は5月17日、午前中の授業後に体調不良を訴え早退。数時間後、自宅で意識を失っているところを祖母が見つけ、病院に運ばれたが18日に亡くなった。
遺族によると、居間に遺書が残され、同級生から「よう学校に来られるね」「死ねばいいのに」などの言葉を浴びせられ、「誤解なのに」「とても苦しかった」「もう死にたい」と書かれていた。女子生徒が自殺した後の学校による調査では、同級生からの暴言があり、インスタグラムでのやりとりが暴言の背景になったとの指摘があったという。
審議会は6月に第1回の会合を開き、同級生や友人、教職員への聞き取り調査をしてきた。
遺族は審議会の委員について、遺族が推薦するメンバーを含めるよう求めていたが、県教委は応じなかった。これまでに委員3人が「審議される事案の関係者と関わりがある」「体調不良」などの理由で交代していた。(池上桃子)
「娘に寄り添い審議を」高3自殺、母親が思い語る
「娘がどんな思いで、どんなことに傷ついて、追い詰められていったのか知りたいです」。熊本県北部の県立高校3年の女子生徒(当時17)が5月に自殺した問題で、20日、県いじめ防止対策審議会は中間報告をまとめた。女子生徒の母親(45)は県庁で記者会見を開き、涙ながらに苦しい思いを語った。
中間報告では、女子生徒が自殺した日の授業中に「死ねばいい」「うそしかつかん」「何回言ってもわからん」などの発言があったことや、インスタグラムの動画に男子生徒と一緒に映り込んでいたことが複数の生徒の間で話題になっていたことなどを事実と認定している。
母親は「これまで私たちが把握していたことがほぼ事実としてわかった。当日のことが娘にとっては限界だったのかと思う。どういう気持ちで娘にそういう言葉を放ったのか、言った子の気持ちも知りたい」と話した。
「死ねばいい」の発言に関して中間報告では「普段から掛け合いの言葉でも使っていた」と注釈をつけている。母親は「軽く使われている言葉というニュアンスになっているのが気になる。娘にとっては重い言葉だった」と述べた。
母親は女子生徒が早退した後に帰宅し、泣きはらしたようなまぶたでスマホをいじっている姿を見たという。「学校で何かあったんじゃないかということはわかっていた。あの時仕事に戻らなければ止められたんじゃないか。後悔しています」と声を詰まらせた。
審議会は教育や医療、福祉などの専門家6人で構成される。全校生徒へのアンケートや、生徒や教員への聞き取り調査を続けてきたが、1回目の会合があった6月からこれまでに3人の委員が交代した。母親は「引き継ぎに問題がないと説明を受けているが、不安がないと言えばうそになる。これ以上の交代はないようにしてほしい」と述べた。
母親はこの日、娘が大切にしていたぬいぐるみを抱えて県庁を訪れた。「娘は遺書でしか言葉を残せていない。娘に寄り添った審議を続けてほしい」(池上桃子、田中久稔)