|2022年11月7日熊本日日新聞
熊本工高の1年生、10月に自殺 いじめ疑い排除できず 県教委が第三者委調査へ
熊本工高生の自殺を調べる第三者委員会の設置について記者会見する県教育委員会の幹部ら=7日、県庁
熊本県教育委員会は7日、熊本工高(熊本市中央区)1年の生徒(16)が10月23日に自殺したと発表した。県教委は学校の報告から、生徒が、所属する部活動の部員によるいじめを苦にしていた疑いがあると判断。第三者委員会でいじめの有無や自殺の原因を調べる。
県教委によると、高校は亡くなったことを翌24日に知り、教職員への聞き取りを始めた。調査の中で、いじめという言葉は出なかったが、部活動で人間関係を含む悩みを抱えていた可能性が高く、いじめの疑いを排除できないと判断した。遺書があったかどうかは把握していないという。
高校の調査では、生徒が8月ごろから、部活動の悩みを担任や顧問に相談していたことが判明。亡くなる直前の10月21日にも相談していた。部員らと話し合う機会もあったが、最近は体調不良で休むこともあったという。部員による暴力や無視は確認していない。
高校は、いじめ防止対策推進法上の「重大事態」の疑いがあると判断。県教委は、この判断と遺族の「真相を知りたい」との意向を踏まえ、7日に開いた臨時会で、常設の第三者委「いじめ防止対策審議会」が調査することを決めた。医師や弁護士ら有識者6人が生徒への聞き取りなどを進める。開始時期は未定。
同日の会見では、生徒が死亡した状況や性別、居住地、所属する部は「遺族が望んでいない」などとして公表しなかった。白石伸一県教育長は「尊い命が失われ、心からご冥福をお祈りする。
ご遺族のお気持ちに寄り添いながら、学校とともに丁寧に調査を進める」とのコメントを出した。
高校は、生徒が急死したことを10月24日に学級と部活動の部員に説明した。今後、保護者説明会を開く予定。県教委はスクールカウンセラーを派遣し、生徒のケアに当たっている。(臼杵大介)
■県教委2例目、第三者委の自殺調査
県教育委員会は、熊本工高の生徒の自殺を受け、いじめ防止対策推進法に基づき、第三者委員会による調査を始めることを決めた。県教委が、生徒の自殺に関して第三者委を設置するのは2例目。
1例目の女子生徒のケースでは、調査結果がまとまるまで約9カ月を要した。
女子生徒は県北の県立高3年だった2018年5月17日に自殺を図り、翌18日に亡くなった。県教委はその10日後、第三者委でいじめの有無などを調べる方針を発表した。第三者委は高校の校内調査が終わった後の6月下旬、詳細な調査に着手。計24回の会合を重ね、全校アンケートや生徒、教職員の聞き取りなどを行った。
第三者委は19年3月に報告書を公表し、複数の級友による「死ねばいい」といった発言など5件をいじめと認定。自殺との因果関係も認めた。ただ遺族が調査結果の一部を不服としたため、県教委とは別に県が設置した第三者機関が改めて調べた。
いじめに関する調査では、結果に納得しない遺族が再調査を求めることが少なくない。県教委は「遺族の意向を丁寧に確認しながら進めたい」としている。(臼杵大介)