生徒自殺 町側が請求棄却求める

令和2年9月17日付NHK福井放送局

3年前、池田町の中学校で、当時14歳だった男子生徒が自殺した問題で、生徒の母親が「教員の厳しい叱責で自殺に追い込まれた」などとして町と県におよそ5500万円の損害賠償を求めた裁判の初めての口頭弁論が福井地方裁判所で開かれ、町と県は「教員の指導に違法性はなかった」などとして争う姿勢を示しました。
この裁判は、平成29年3月に、池田町の中学校で当時14歳だった2年生の男子生徒が自殺した問題を巡って、生徒の母親が「教員の厳しい叱責によって自殺に追い込まれ、精神的な苦痛を受けた」などとして町と県を相手取り5470万円あまりの損害賠償を求めています。
16日、福井地方裁判所で初めての口頭弁論が開かれ、母親は、意見陳述で「未来ある息子の命を子どもを教える立場の教師が奪ってしまった」と指摘したうえで、「裁判所には改めてどのような事実があってこのようなことが起こってしまったのかを明らかにし、責任の所在を明確にしてほしい」と訴えました。
これに対して、町と県側は、男子生徒が自殺した事実は認めるとしたうえで、▼学校側が自殺を予見することはできず、▼教員の叱責と自殺との因果関係は認められないとしたほか、▼体罰を加えるなど指導に明らかな違法性はなかったなどとして、請求を棄却するよう求め争う姿勢を示しました。
この問題を巡っては、町の教育委員会が設置した第三者委員会が「自殺の原因は教員から繰り返し厳しい指導を受けたことで、教職員間の情報共有が不十分で学校の対応にも問題があった」と指摘しています。この問題を巡っては、町の教育委員会が有識者からなる第三者委員会を設置し、生徒の自殺から7か月後に調査報告書を公表しています。
報告書では、▼担任や副担任が繰り返し厳しい指導をしていたことや▼生徒の特性に配慮した指導を怠っていたこと▼それに、教職員間で生徒に関する情報の共有が不十分だったと指摘されていて、こうした結果、生徒が精神的に追い詰められて自殺に至ったとしています。
また、町は、この問題を受けて▼生徒の状況について教職員間の情報共有を徹底することや▼スクールカウンセラーの活用を進めることなど再発防止に取り組む姿勢を示しました。
一方で、町は生徒の母親との間でこれまでも慰謝料についての交渉を行ってきましたが、最終的な金額について双方が合意に至ることができなかったということです。
このため母親側が今回、国家賠償法に基づいて損害賠償を求めて提訴するかたちとなりました。
16日の口頭弁論で、池田町と県は、男子生徒の自殺について国家賠償法上の責任はないとして請求の棄却を求めました。
今回の裁判を通して、生徒の自殺と学校の指導との因果関係や、学校側の責任がどの程度まで認定されるのかが主な争点になります。

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