平成31年1月12日付神戸新聞
神戸・中3自殺 市教委、調査メモ隠蔽で幹部5人を懲戒
メモ隠蔽で幹部の処分を発表し、謝罪する神戸市教委幹部=11日夜、同市役所
2016年10月、神戸市垂水区の中学3年の女子生徒=当時(14)=が自殺し、いじめを証言した同級生らのメモが隠蔽された問題で、同市教育委員会は11日、遺族からの質問書にメモの存在を否定するよう前校長に指示したなどとして、首席指導主事=休職中=を停職3カ月にしたほか、当時の幹部4人を減給や戒告などの懲戒処分にした。
他の処分は、総務部担当部長(前学校教育部長)=減給10分の1(1カ月)▽教育次長、総務部長、総合教育センター担当課長(前学校教育課長)=戒告。保健福祉部担当部長(前学校教育課担当課長)は、懲戒には当たらない文書訓戒の処分とした。また、雪村新之助前教育長は調査を徹底しなかったとして、在職時の報酬月額の10分の1(3カ月)を自主返納。
前校長も同様の相当額を自主返納する意向という。
市教委は教職員26人を聴取。メモは公文書に当たらないとして、隠蔽は「不適切な事務処理」とした。17年2月の遺族の質問書は部署内で共有したが、メモの存在を認識しながら「ない」と回答したことを把握していたのは首席指導主事と前校長だけで、組織的関与はなかったと結論付けた。
同年8月、メモの存在が伝えられた教育次長や総務部長らは、その存在を積極的に確認しなかったが「メモへの具体的な認識がなく、組織的に隠蔽したとは認められなかった」とした。
女子生徒の遺族は「これまでの市教委の立場を踏襲したもので、組織的な隠蔽についての全容解明にはほど遠い」などとコメントした。(井上 駿、広畑千春)
2016年10月、神戸市垂水区の中学3年の女子生徒=当時(14)=が自殺し、いじめを証言した同級生らのメモが隠蔽された問題で、同市教育委員会が11日、幹部職員を懲戒処分したことなどに対し、女子生徒の遺族が文書でコメントした。全文は次の通り。
本日、神戸市教育委員会より、いわゆる「メモの隠蔽」問題などに関して6人の教職員に対する懲戒処分などについてご説明を受けました。
懲戒処分そのものについては教育委員会内部の人事に関する問題であり、その軽重を含めたコメントは差し控えたいと思います。
もっとも、メモの隠蔽に至る経緯については、首席指導主事が当時の校長に指示をしたというこれまでの教育委員会の立場を踏襲したものであり、組織的な隠蔽についての全容解明にはほど遠いものと言わざるを得ません。
事件直後にいじめの事実を勇気を持って告発した同級生の証言を記載したメモは大変貴重な資料であるはずですが、今なお、これを軽いものと扱っているように感じられて残念でなりません。
現在、神戸市長のもとで再調査が行われておりますが、時間の経過もあり、真実解明が困難になっているのではないかと大変心配をしております。事件発生直後の神戸市教育委員会のもとでの調査の段階で、積極的ないじめの事実調査と遺族に寄り添った情報公開がなされなかったことが悔やまれてなりません。
今回の処分を契機に、神戸市教育委員会や学校現場において、いじめ予防に対しても、いじめ発覚後の事実調査においても、いじめ防止対策推進法に基づいて、被害生徒やその保護者に寄り添った積極的な対応がなされる組織風土に変わることを願ってやみません。