平成31年2月28日付朝日新聞西部本社版
自殺生徒は「学習障害」「能力異常に低い」教職員が発言
山口県周南市で2016年、県立高校2年の男子生徒(当時17)が自殺したことをめぐり、教職員が県の調査検証委員会の聞き取り調査に対し、「いじられて嬉しい人もいる」などと発言していたことがわかった。生徒の両親は27日、記者会見し発言を批判。県教育委員会に、いじめ自殺に関係した教員の処分や再発防止などを申し入れた。
検証委は昨年5~11月、教職員20人にいじめの有無について聞き取り調査を実施。今月5日に公表した報告書とともに、調査概要をまとめた非公表の文書を遺族に渡していた。
両親によると、非公表の文書には複数の教職員が聞き取り調査に「(からかいや揶揄などで)いじられて嬉しいという人もいる」「(男子生徒は)学習障害」「能力が異常に低い」「(いじめに)大きな問題はない」などと発言したと記載されていた。
検証委は「いじりと呼ばれていた行為は、いじめにあたる」と報告書で認定した。両親は会見で、こうした発言について「激しい憤りと強い疑問を感じずにはいられない」と批判。母親は「同じことが繰り返されないよう、県教委は学校を指導してほしい」と語った。
両親はこの日、いじめが自殺の主な要因と認定した検証委の報告書を踏まえ、「いじり」は「いじめ」だとの認識を学校現場に徹底▽教員向けにいじめ防止の研修を実施し、経過と成果を遺族に報告▽いじめ自殺に関係した教員の処分――などを求める申入書を県教委に提出した。
県教委学校安全・体育課の原井進課長は両親に対し、いじめ自殺を防げなかったことを「心からおわびを申し上げます」と初めて謝罪。申入書の内容については「検討し、丁寧に対応したい」と話した。(棚橋咲月)
県の調査検証委員会が実施した聞き取り調査に対する教職員の主な発言
・「いじられて嬉しいという人もいる」
・「(自殺した生徒は)学習障害」「異常に字が汚い」「能力が異常に低い」
・「(携帯用ゲーム)ポケモンGOがすごく流行っていた。ゲームも好きそうだったので、それが原因だった」
・「いじられながらも相手をしてもらった方がいい」
・「(遺族の)お父さんは今回大きな『いじめ』があったと思っているかもしれないから、これを説得するのは難しいかもしれないけど、大きな問題はない」
・「靴下の色を言われてむかつく人もいるし、何とも思わない人もいる」
・「自分たちはいじりを行っていた生徒も知っているが、みんな良い子」
※遺族が山口県教委に提出した申入書から
「見殺しにされた…」自殺生徒の両親、教職員発言に憤慨
山口県周南市で2016年7月に県立高校2年の男子生徒(当時17)が自殺したことについて、県の調査検証委員会の聞き取りに対する教員らの発言が明らかになった。27日に県庁で記者会見した遺族の両親は教員らのいじめに関する認識に対して怒りを口にし、関係した教員らの処分を県教育委員会に求めた。
「傷つき、苦しめられた息子を見殺しにしたのと同じ」「激しい怒りを感じる」。県教委への申し入れ後、記者会見した両親は教職員らの発言について、厳しい言葉で批判した。
今回明らかになったのは、県の検証委が昨年5~11月に教職員20人に聞き取った内容をまとめたもの。男子生徒に対する、いじめやいじりについて、「いじられながらも相手をしてもらった方がいい」「(いじりをした生徒も)みんな良い子」などといった教員らの発言が、両親に示された聞き取り調査の概要に記されていた。
特に両親が指摘したのは、亡くなった男子生徒について教員が「能力が異常に低い」「学習障害」「やりとりもかみ合わない」「質問に対してくどくど言い訳をする」とした発言。母親は「一方的
に人格を否定する内容に、憤りを超えた強い感情を遺族として抱く」と批判し、「真実から目を背ける教員に子どもを指導する資格などない」と訴えた。
今回の発言には「どこまで本人が傷ついていたかがわからない。体調とかもあると思う」「進路は悩んでいたと思う」とするものもあった。これらについて、両親は「責任転嫁するかのような発言には強い憤りを覚える」とし、関係教員の処分を強く求めた。
両親はこの日、県教委学校安全・体育課の原井進課長らと面会した。原井課長は自殺を防げなかったことを初めて謝罪し、「真摯(しんし)に受け止め、丁寧に対応することで再発防止に全力で取り組む」と話した。
いじめの有無を調べていた県の検証委は今月5日、報告書を公表。男子生徒に対し、LINEメッセージによる仲間はずれなど18項目のいじめを認定し、自殺の主要因になったと結論づけた。
教職員からも部活動の押しつけなど5項目の「いじめに類する行為」があったとした。(棚橋咲月、井上怜)