【12月24日付 神戸新聞社説】

学校で事故が起きやすいのは体育系の部活動だ。校内での練習場所や時間帯が限られるためで、夏は天候の影響を受けることもある。
児童、生徒らが事故に遭わないようにするにはどうすればよいのか。考えさせられる判断が示された。
兵庫県立龍野高校(たつの市)でテニス部の練習中に倒れ、寝たきりとなった当時2年生の女性と両親が起こした訴訟だ。最高裁第3小法廷は、顧問が不在でも適切に指導する義務があると結論づけ、県の上告を退けた。二審大阪高裁が将来の介護費用を含む約2億3千万円の支払いを県に命じた判決が確定した。
2007年5月に起きた事故で、当時テニス部主将の女性は正午の練習開始から約3時間後に倒れた。
中間試験の最終日で、11日ぶりの部活動だった。顧問の教諭は出張のため開始からしばらくして現場を離れ、女性は顧問が残した指示のメモにしたがって練習を進めた。
たつの市に近い上郡町の当日の最高気温は27度。二審は一審が認めなかった女性の倒れた原因を熱中症と認め、危険を予見できたのに教諭が水分補給や休憩時間を取るなどの指示をしなかった過失を認定した。
学校管理下で起きる児童、生徒の突然死や重い後遺症を伴う事故のうち、災害共済給付が適用される事案の多くは部活動中のものだ。
事故後の学校や教育委員会の対応に、不満を感じる保護者は少なくない。文部科学省の調査では外部の有識者を交えた検証委員会を設置する例はわずかで、結果を保護者に公表する例はさらに少ない。
女性のケースも残念な対応の一つに数えられよう。両親は、学校側も一緒に原因を考えてほしいと考えたようだ。しかし、学校は「(女子生徒が)病気で倒れた」「学校に瑕疵はない」と突き放し、両親は事故から約3年後に訴訟に踏み切る。
顧問が書き残したメモの内容について学校側はもっと丁寧に説明すべきだし、第三者の検証で事の次第を明らかにする誠実さがほしい。
学校側はどこまで安全に配慮すべきなのか。裁判が残したもう一つの課題である。生徒との対話を重視し、モノを言いやすい環境をつくるのは重要だが、決め手になるのか。
部活動中の事故をなくす取り組みに恐らく「十分」はない。不断の検証と実践の積み重ねが大事だ。

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