平成29年10月3日大分合同新聞
高裁も重過失認定 竹田の剣道部員死亡
大分竹田1
大分竹田2
2009年に竹田高校(竹田市)で剣道部の練習中に工藤剣太さん=当時(17)=が熱中症で倒れて死亡した事故を巡り、元男性顧問(54)=大分県教委職員=らの賠償責任が問われた訴訟の控訴審判決が2日、福岡高裁であった。佐藤明裁判長は、元顧問に「重過失があった」と認定。100万円を請求するよう県に命じた一審大分地裁判決を支持し、県側の控訴を棄却した。
原告の両親側の代理人弁護士によると、学校現場の事故に関し、住民訴訟により公務員個人の賠償責任を認めた判決は高裁レベルで初めて。「部活動の指導において暴力行為には厳しい措置が取られると明確化した。
今後の教育界に大きな影響を与える」と評価した。
判決理由で佐藤裁判長は、当時の状況を「剣太さんの熱射病(重い熱中症)を疑うべき事態だったにもかかわらず、元顧問は演技だと決め付けて指導を続けた」と判断。「生徒の安全確保を図る教諭の立場にありながら、わずかな注意をすれば有害な結果を予見できたのにそれもしなかった」と非難し、「重過失があると言わざるを得ない」と結論付けた。
両親側が付帯控訴していた元副顧問の男性教職員(50)の賠償責任は「元顧問の意向に反することは困難だった。
重過失があるとまでは言えない」と退けた。
訴訟は剣太さんの両親が、部活動を指導していた元顧問と元副顧問の責任を追及するため15年12月に提訴。
県に対し、2人に賠償金の支払いを請求(求償)するよう求めた。
16年12月の一審判決は、剣太さんが熱中症で異常を来し、竹刀を落とされたのに気付かず構えを取るなどした行動を元顧問が「演技」と決め付け、蹴ったり頬をたたくなどの暴行を加えて状態を悪化させたと認定。県による賠償額約2750万円のうち、保険で賄う分を差し引いた200万円の半額を元顧問に請求するよう県に命じた。
県側は「部活動に携わる教員に大きな影響がある」などとして控訴していた。

「学校事故の壁」に風穴
◆解説◆
学校現場で事故を起こした教諭に、個人としての賠償責任を問えるか。福岡高裁は一審大分地裁に続き、剣道部元顧問に重過失があったとして責任を認めた。熱中症の生徒に暴行を加えた事実や、死亡という重大な結果を踏まえれば、常識的な感覚に沿った判断と言える。
公務員が職務上の行為で損害を与えた場合、国家賠償法の規定で、賠償責任は国や自治体が負う。「故意」や「重過失」があったと認められれば、国や自治体が公務員個人に賠償額を請求できるが、実際に責任が問われるのはまれだ。
死亡した生徒の両親は「学校の外で大人が子どもをたたけば犯罪だが、学校内なら個人は責任を負わない。
そんなことが許されるのか」と訴えてきた。今回の判決は、そうした“壁”に風穴を開けたと言える。
「熱血指導」が悪質な不法行為になっていないか。教育関係者はいま一度省みる必要があるだろう。

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