【1月16日 朝日新聞デジタル】

新しい年の始まりは、スポーツ界にとって、事件の「それから」を顧みる節目でもある。大阪・桜宮高バスケットボール部主将が顧問の暴力などを理由に自殺したことが2013年1月8日に明らかになってから、3年を迎えた。

スポーツの暴力指導はなくなっているのだろうか。

「個人的には痛い思いも必要と思う面はあログイン前の続きる。でも、絶対に殴れない」。関東のある公立中の野球部顧問は話す。

東京都の調査をみると、部活動中の体罰が把握された指導者は公立中高合わせ、12年度が87人、13年度が31人、14年度が11人。生徒へのアンケートなどで明るみに出やすいこともあり、「暴力はダメ」という職員室の合意形成は進んでいるとみえる。とはいえ、根絶はされていない。

また、神奈川県の公立中の運動部顧問の一人は「たたかなくなった代わりに、口がきつい顧問が目につく」と明かす。うまく指導できないいら立ちを、結局は生徒にぶつけてしまう光景である。

先の野球部顧問は「経験の浅い先生は生徒となあなあの関係しか築けず、部活がお遊びの延長になっている」とも言う。強圧的な指導で従わせるやり方が“常道”だった日本スポーツ界で暴力が否定され、「どうすれば……」と立ち尽くす部活動指導者たちがいる。

そんな中、新年度から教員を目指す学生を対象に、宮城教育大では「運動部活動の教育学」の講義が始まる。大体大でも「運動部指導実践論」のカリキュラムができた。学校で教育課程外に位置づけられる運動部活動に特化した講義は、これまで大学のカリキュラムになかった。指導者に求められる資質、理念への理解を学生時から深め、暴力に頼らないスポーツ指導につなげる大学側の動きだ。

今も「うちの子をたたいてください」と保護者に請われる顧問は多い。スポーツ推薦を含めた進学がからみ、我が子の競技成績のためなら親は暴力指導の肯定論者になり、指導者を誘惑する。14年の日本体育学会の調査によると、自治体が体罰に関して出したガイドラインの資料のうち、約80%は学校の教職員に配られたが、保護者を配布対象としたものは約5%のみ。この部分はまだ手つかずに近い。

暴力容認文化の払拭(ふっしょく)への道は長い。風化だけは避けなければならない。

(編集委員)

◇Twitterで発信中 @nakakojit

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