平成31年1月21日付河北新報
<いじめ母子心中>両親のメモを無断で相手に 学校の対応に不信募らす
小学2年の長女へのいじめを苦に母親が2人で無理心中したとみられる事件は学校のちぐはぐな対応がいじめ収束の機会を逃し、不用意な行為が家族の不信感を招いた経緯が父親の証言から浮かぶ。 父親によると、両親は昨年5月に長女が同級生2人からいじめを受けたことを知り、学校に相談。担任教諭は同級生の保護者に連絡せず、子ども同士の握手で仲直りをさせたが、収束しなかった。 校長室登校を続ける長女に校長が教室へ行くよう促したが、裏目に出た。父親は「長女は我慢をして教室に行き、体調をさらに崩した」と指摘した。 学校への不信がピークに達したのが、昨年8月にあった同級生の親との話し合いだった。 両親が同級生への質問項目を書いたメモを、校長が無断で相手方に渡したことが分かった。「口頭で謝罪を受けたが、情報管理ができておらず信用できなくなった」と振り返る。 母親は9月以降も市教委に相談したほか、文部科学省の24時間子どもSOSダイヤルに連絡したが、具体的な対応はなかったという。 長女は8月に「しにたいよ」と手紙に記すなど、ふさぎ込むようになった。父親は「母子で家にいる日が多くなった。2人は誰も頼れず、追い詰められてしまった」とうなだれた。
<いじめ母子心中>全国自死遺族連絡会代表理事「いじめ 家族追い込んだ」
「しにたいよ」。父親が公表した両親宛ての手紙で、長女は全てひらがなで悲痛な胸の内をつづっていた
仙台市泉区で昨年11月、母親が寺岡小2年の長女(8)と無理心中したとみられる事件で、全国自死遺族連絡会(仙台市)の代表理事田中幸子さん(69)=青葉区=が20日、河北新報社の取材に応じた。田中さんは「いじめが家族全体を追い込み、最悪の結果となった」と述べ、市内で相次いだ中学生のいじめ自殺と本質は同じとの認識を示した。 母親は長女への同級生によるいじめに悩んで体調を崩し「精神的に追い詰められた」(父親)とみられる。田中さんは「いじめがなければ痛ましいことは起きなかった。いじめは決して許されない」と語った。 市内では2014年9月以降、いじめを訴えた中学生の自殺が3件発生。「本質は全て同じ。学校だけで対応できないのに市教委の指導や専門機関の助言が十分でなかった。
教訓を生かさないと、不幸な事態がまた繰り返される」と警鐘を鳴らした。 事件後、父親の周囲では「子供を道連れにした」「育児に悩んでいた」と母親や長女への中傷が広がったという。田中さんは「学校のいじめは地域全体に有形無形の影響が出る。いじめを訴えた側をはじき出すことは絶対にあってはならない」と強く指摘した。