平成28年12月18日毎日新聞
=福島県郡山市で2016年12月17日午後5時11分、宮崎稔樹撮影福島県郡山市の日本大学東北高校相撲部で顧問を務める20代の男性教員らが、「指導」として部員を硬質のゴム製ハンマーでたたいたり、ノコギリで脅したりする暴力行為を繰り返していたことが日大本部への
取材で分かった。教員は学生相撲の名門・日大相撲部で主将を務め全日本選手権で準優勝している。
けがをさせられ転校を余儀なくされた部員もいるが、教員は処分されておらず、現在も授業を受け持っている。
【宮崎稔樹、土江洋範】 同高によると、教員は2015年度、同高に非常勤の体育教師として採用され、相撲部の顧問に就任。
16年度には正規採用された。 日大本部企画広報部によると、教員は稽古中、男子部員の顔を平手でたたき尻を蹴るなどの行為を繰り返し、ゴム製ハンマーで頭をたたいたこともあった。 また、非正規職員である相撲部の男性コーチは部員が腕立て伏せをする際、体の下にノコギリの刃を上に向けた状態で置き「ちゃんとやらんと刺さるぞ」などと脅していた。 今年5月には部員の1人が稽古後の入浴のため裸になったところを教員がデッキブラシで暴行し、けがをさせた。部員は医師の治療を受け、保護者が高校に連絡。同高は7月に教員に聞き取りをし
「行き過ぎた指導」と判断した。この教員に反省文を提出させ大会の引率など対外活動を自粛させたが、部の指導や体育の授業、クラス担任は続けさせていた。 一方、男性コーチは9月30日付で退職。デッキブラシで負傷した部員は転校した。 しかし、毎日新聞が今月、暴力行為の詳細について日大本部に確認を求めたところ、同高は教員から改めて聞き取りを実施。ハンマーとノコギリの使用について初めて把握したといい、事態を重く見て16日から顧問としての活動を停止させた。 日大本部企画広報部の担当者は「教員は部員を強くしようと思うあまり指導が行き過ぎた。本人も反省している」と説明した。一方で処分をせずに授業やクラス担任を続けさせることについては「(相撲部の指導と)
授業とは関係ない」との見解を示している。 教員は毎日新聞の取材に「何も言えない。日大本部に聞いてほしい」と語り、元コーチは電話取材に「分からない」と話している。
◇部活強化、後絶たぬ体罰 日大東北高のホームページによると、相撲部は過去に全国高校総体(インターハイ)に14回出場。昨年度は
県レベルでは個人戦で上位の成績を残したが、同高によると、部の強化を図るため男性教員が採用されたという。 学校の運動部活動の現場では、「指導」と称した暴力がこれまでも問題視されてきた。2012年12月には大阪市立桜宮高校バスケットボール部主将の男子生徒(当時17歳)が当時の顧問の暴行などが原因で自殺。
元顧問は傷害罪などで懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を受けている。 生徒の自殺後に文部科学省が実施した調査では中学と高校での体罰の4割前後が部活動中だったことが判明しており、各地で「体罰根絶」に向けた取り組みが進められている。だが、13年には愛知県の私立高硬式野球部の監督だった男性が練習中に部員の頭や顔を殴るなどしたとして暴行罪に問われ罰金刑を受ける事件も起きている。