|2022年11月14日付熊本日日新聞
中1自殺の元担任、前年に別児童への暴行容疑で起訴猶予 熊本市教委は処分せず
2019年に自殺した熊本市立中1年の男子生徒を小学6年の頃に担任し、市の第三者機関から不適切な指導が指摘された男性教諭が自殺の前年、別の男子児童に対する暴行容疑で書類送検されていたことが14日、分かった。熊本区検は起訴を見送ったものの、犯罪の成立を認める
起訴猶予処分にした。
関係者によると、男性教諭は18年4月、入学式の準備をしていた男子児童の胸ぐらをつかんで用具入れに押しつけた。児童は約1週間の首の打撲と診断されたほか、不安や恐怖を訴える急性ストレス反応が出た。県警に告訴した保護者は熊本区検の不起訴処分(起訴猶予)を不服とし、
検察審査会に申し立てたが、不起訴相当と議決された。
市教育委員会は起訴猶予を把握していたものの処分はせず、「男性教諭が関わったほかの事案を含め、まとめて処分してほしいと保護者側から要望があり、保留にした」と説明。処分は今後検討するという。男性教諭は現在、別の市立校に勤務。校長によると、男性教諭は「取材の目的、内容を事前に通知してもらい、考えを整理した上で話したい」と言っている。
一方、男子児童は学校に居づらくなって転校した。母親は熊日の取材に対して「市教委が適切に男性教諭を処分していたら、息子の友人だった生徒が命を絶つことはなかったかもしれない」と話している。
市の第三者機関・詳細調査委員会は10月、小学6年時に悪化した抑うつ状態が男子生徒の自殺の一因で、複数児童を大声で叱るなどした男性教諭の不適切な指導が強く影響した蓋然性が高いとする調査結果を発表した。(植木泰士、上島諒、臼杵大介)
■「助けられた命だった」 悔やむ学校関係者
「児童を立たせて、ほかの児童にその子の悪いところを挙げるよう命じた」「『死ね』などの暴言は当たり前だった」-。2019年に自殺した熊本市立中1年の小学6年時に担任だった男性教諭の暴行容疑が明らかになった。当時を知る学校関係者は、男性教諭の不適切な指導を振り返り、「大人が早く対処していれば助けられた命だった」と悔やんでいる。
関係者によると、男性教諭は児童の椅子を引く音や声の小ささに激高。心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断されたり、卒業後に中学校へ登校できなくなったりする子どももいた。「ほかの教職員たちは男性教諭の暴力や暴言を知っていた」という。
保護者らは以前から男性教諭の言動を問題視していたが、男性教諭は18年、小学6年になった男子生徒らのクラス担任になった。入学式の準備中、男子児童の胸ぐらをつかんで約1週間の打撲を負わせたのは、その直後だった。
19年3月、保護者の有志は遠藤洋路教育長に再発防止策を求める嘆願書を提出したが、男性教諭の振る舞いは変わらなかった。その1カ月後、中学生になったばかりの男子生徒は自ら命を絶った。
生徒のノートには「死」「絶望」といった文字が残されていた。(植木泰士、上島諒)