平成29年11月21日朝日新聞新潟版
いじめ第三者委、「捜査でなく提言」? 調査力は
授業で作ってくれたカレンダー、選んでくれた時計。男子生徒と父親の思い出の品だ=新潟市中央区
――どんな子でしたか?
「小遣いをはたいてプレゼントをくれた。とにかく優しい息子でした」
――家での様子は?
「家で荒れることもなく、ほかの子と同じように過ごしていたと思います」
10月18日夕。6月に自殺した新発田市の中学2年の男子生徒の父親が、第三者委員会の聞き取りに臨んだ。
10問ほどの質問書を手渡された後、委員全員に質問を受け、答えていった。
生徒は6月25日早朝、自宅の作業小屋で首をつった状態で発見された。その後の調査で、昨秋から他の生徒に悪口を言われ始め、5月の担任との面談で悩んでいると相談したが、いじめと認識されなかったことも明らかになった。
「(担任から)早く連絡をもらえていれば」。悔やみきれない思いが残る。
学校や市教育委員会は「第三者委の調査結果を待ってほしい」と話すだけ。率先して真実を明らかにしようとしない姿勢に不信感が募った。父親は8月、第三者委に対し、学校や市教委の報告をうのみにするのでなく、自ら聞き取りをするよう
要請した。
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父親が期待をかける先となった第三者委員会。実はその設置、人選、運用は各教育委員会に任されているところが大きい。
2011年の大津市立中学2年のいじめ自殺事案では、学校や市教委の隠蔽が指摘され、第三者委は加害生徒ら50人以上、
90時間超の聞き取りを実施。報告書には「労を惜しまず、収集した資料の正確性を可能なかぎり検証しなければならない」と記した。
遺族が推薦した委員を入れるなど大津市の第三者委は注目を浴びた。だが、この問題を契機に成立した「いじめ防止対策
推進法」(13年9月施行)に基づく第三者委の姿勢には、各地で温度差がある。
昨年11月、福島第一原発事故で新潟市に避難した男子児童が担任や同級生に名前に「菌」をつけて呼ばれた問題が起きた。第三者委は、児童や同級生への聞き取りはせず、今年3月に報告書を提出。「調査は不十分な面がある」と前置きした上で、菌発言と原発事故の間に直接の関係はない、と結論づけた。
委員の1人は市教委の希望する期限に間に合わせることを意識したとし、「第三者委の目的は提言を答申すること。捜査機関ではない」と話した。
◇
新発田市庁舎の一室。代理人弁護士と席についた父親の前には、市教委に依頼された第三者委の6人が並んでいた。
息子の死の真相解明を託す人たちだ。
約1時間の聞き取りを終え、父親には不安が残った。信頼しきれない市教委が選んだ、よく知らない委員たち。委員長は
元市立中学校長が務めているという。「正直、報告書が出るまで半信半疑です。学校や市教委からの報告で、私たちが
『おや?』と感じる部分を突っ込んでくれるのか」
父親は心に疑問を抱いたまま、日々を過ごす。「なぜ、うちの子がこうなったのか。それを明らかにし、包み隠さず教えてほしい」。
第三者委は今月15日に校長や担任など教員への聞き取りを終えた。来年6月の生徒の一周忌までに報告書をまとめる方針だ。
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子どものいじめが後を絶たない。第三者委員会は真実を求める被害者側の頼みの綱の一つで、再発防止の役割も備える。
県内の第三者委を巡る動きを追った。(狩野浩平)