平成29年11月22日毎日新聞
周南いじめ自殺 部活指導の適否、第三者委が判断放棄

周南いじめ
高校2年生の自殺事案を検証した最終報告書について記者会見する第三者委の委員長、田辺山口大教授(左から2人目)ら
=山口市の県庁で2017年11月21日午後1時2分、土田暁彦撮影

 山口県周南市で昨年7月、県立高校2年の男子生徒(当時17歳)が自殺した問題で、県教委設置の第三者委員会(委員長、田辺敏明山口大教育学部教授)は21日、記者会見し、生徒が自殺の8日前から参加していた野球部の練習で、顧問の指導が適切だったかについて、県教委に判断を委ねる方針を示した。遺族らは「第三者委の責務を放棄している」などと反発している。
 第三者委は記者会見で最終報告書の概要版(21ページ)のみを公表。本体の報告書(183ページ)は「生徒への聞き取りが、公表を前提にしたものでなかった」として非公表とした。
 毎日新聞が独自に入手した最終報告書は、学校生活で一部にいじめがあったと認定し、野球部での練習もストレス要因に
なったとした。一方、野球部の詳しい練習内容には踏み込まないまま「練習メニューに加減がなされていた」などの顧問の
主張を載せ、顧問の指導について「練習における配慮が十分だったか検討の余地がある」と記載するにとどめている。
 会見で、顧問の指導の適切さを判断しなかったことについて田辺委員長は「運動部の練習が適切なのか客観的な基準が分からない」と述べ、県教委に判断を任せる意向を示した。
 遺族は「顧問の指導を含む教員の対応について第三者委の調査が不十分」として、村岡嗣政知事に第三者委の構成員を代えるなどして再調査するよう要望する意向だ。
 いじめ調査に詳しい野口善國弁護士(兵庫県弁護士会)は「第三者委は顧問の言い分をうのみにせず、別の教員や生徒の
証言に照らして事実認定すべきだ」と指摘。また、「学校事故事件遺族連絡会」世話人の山田優美子さん(48)は「そもそも身内の県教委では信頼できないから第三者委を設置したはずだ。あくまで県教委は調査される側であり、県教委に判断を
委ねるのは見当違いで、第三者委の責務を放棄している」と話している。【土田暁彦、祝部幹雄】
 ◆最終報告書の骨子
・男子生徒は学校生活で日常的にからかわれるなど“いじり”を受け、一部はいじめに該当する。
・生徒は野球部の顧問に頼まれ、練習に参加。元々所属していたテニス部員から無料通信アプリ「LINE(ライン)」に
「部室の荷物を捨てる」などと書き込まれたのは、いじめに該当し、両部の顧問らは連携不足があった。
・個々のいじめや“いじり”は、多数あるストレス要因の一つで、一つ一つの影響は少ない。いじめのみを自殺の原因と
考えることはできない。

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