平成31年3月19日付朝日新聞東京本社版夕刊

担任、5日前の懇談で母に「問題ない」 尼崎中2自殺

兵庫県尼崎市立中学2年の女子生徒(当時13)が2017年12月、「学校がしんどい」とメモを残して自殺した問題で、生徒が亡くなる5日前にあった期末懇談で、学校での人間関係を尋ねた生徒の母親に対し、担任の教諭が「問題ない」と答えていた。生徒はその約1カ月前に学校が実施した2度のアンケートに、いずれもいじめをうかがわせる回答をしていたという。

経緯を調べた弁護士らによる市教委の第三者委員会が報告書で指摘した。

報告書によると、女子生徒は17年10月ごろ、クラスのグループから「きもい」「うざい」と陰口を言われ、11月には悪口を直接浴びせられるようになった。

学校が11月1日に実施した生活状況を問う定期アンケート(選択式)で「最近、同級生から何か嫌なことをされたか」との質問に「時々ある」と回答。同6日には、いじめの有無などクラスの状況を問うアンケート(マークシート式)があり、「友達に嫌なことをされたり言われたりする」という質問に「すごく当てはまる」と答えた。

担任は1日のアンケートは確認したが、面談時に生徒から詳しく状況を聞き取らず、他の教諭とも共有しなかった。6日のアンケートは内容を確認せず、集計する他の教諭に渡した。

そんな中、生徒への悪口は次第に攻撃的になり、「死ね」という言葉を周りの生徒も聞くようになった。

市教委によると、担任は「生徒に『大丈夫?』と声をかけたら、大丈夫と返事があった」と調査に答え、当時、状況の重大性を認識していなかったという。

同じ頃、女子生徒は部活動でも人間関係のトラブルに悩んでいた。3年生の進路指導を担当していた顧問や副顧問は練習にほとんど立ち会えず、部員は六つのグループに分かれ、陰口を言い合う状態になった。

自殺前日の12月19日、顧問の指示で部員のミーティングが開かれたが、終わった後は「ギスギスした状態」に陥った。

第三者委は「担任はクラスを統率できず、授業中も私語が目立つ状態になっていた」とし、「いじめが裏に隠れているという認識でアンケートを見ず、いじめを積極的に把握する姿勢に欠けていた」

と批判。顧問についても「部活動を生徒に任せる指導方針だったが、適切な対処をせず、混沌とした状況に至らせた。保護者から適切な対応を求められたのに、複数の教諭で対応することをせず、

単独で判断した」とした。

第三者委は、さらに別の教諭が誤解を元に理不尽に叱責したことなど複合的な要因が絡み合って自殺に至ったとし、「学校が適切に対応すれば、自殺を防ぐことができた」と指摘した。

(崔埰寿、飯島啓史)

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