平成28年12月9日河北新報
仙台市青葉区の市立中2年の男子生徒(14)が、同校の運動部顧問の50代男性教諭から「つぶしてやる」といった暴言を浴びせられるなどし、心身の不調を訴えていたことが8日、分かった。同校は「教諭によるいじめ」と認めて男子生徒側に謝罪し、事実関係の詳細な調査を始めた。
男子生徒の保護者によると、男性教諭は昨年10月ごろから「中途半端で駄目なやつだ」と繰り返し発言。
男子生徒だけに早朝練習を命じたり、正当な理由がないのに執拗に怒鳴ったりした。男子生徒を部活のミーティングに呼ばず、無視することもあったという。
男性教諭は今秋、県の強化選手に選ばれた男子生徒に対し、他の部員の前で「つぶしてやる」と発言。
男子生徒は11月末ごろから精神的に落ち込み、朝から泣きだしたり、眠れなくなるなど心身に不調が現れ、登校にも支障が生じたため通院した。
校長らは保護者から報告を受けて謝罪。男性教諭は「私の言動でつらい思いをさせ、本当に申し訳ありません」
と述べたという。校長によると、男子生徒の素行は模範的で教諭に怒鳴られる理由はなかったという。
校長は取材に対し、「生徒本人の気持ちや心身の不調を考えると、(いじめ防止対策推進法に基づく)学校のいじめ防止基本方針の『重大事態』と受け止めている」と話した。
保護者は8月にも男性教諭の暴言を学校に相談し、一時改善したが、その後、事態は再燃した。現在は顧問を外れ、男子生徒が男性教諭の授業を受ける際は、校長や教頭らが教室内で見守っている。市教委は学校からの調査結果を受けて、男性教諭の処分を検討するとみられる。
◎防止法 教職員のいじめ想定せず
いじめ防止対策推進法は児童生徒間のいじめが対象で、教職員による児童生徒へのいじめは想定していない。
ただ、今回のケースは同法がいじめと定義する「心理的、物理的な影響を与え、(被害者が)心身の苦痛を感じている」行為にほかならず、学校側は同法の「重大事態」に準じた対応に踏み切った。
同法は、いじめにより児童生徒の「心身などに重大な被害が生じた」「相当な期間、学校を欠席することを余儀なくされた」疑いがある場合を重大事態とし、教委や学校による調査を義務付けている。
子どもの人権問題に詳しい藤田祐子弁護士(仙台市)によると、教職員による暴言などは民法の不法行為や国家賠償法で本人や自治体の責任を問うケースが多いが、悪質な場合は刑法の名誉毀損罪や侮辱罪に当たる可能性もあるという。
教職員の心ない言葉で児童生徒に深刻な苦痛を与えるケースは11月、新潟市でも起きていた。東京電力福島第1原発事故で福島県から同市に自主避難した小学4年の男子児童が、担任教諭から名前に「菌」を付けて呼ばれ、不登校となった。