東広島 中2生徒自殺 「指導死」再発防止で和解成立

2023年3月3日 NHK広島

https://www3.nhk.or.jp/hiroshima-news/20230303/4000021463.html

11年前、東広島市の中学2年の男子生徒が自殺し、生徒の両親が複数の教員から学校で繰り返し同じ指導を受けて追い詰められたことが原因だとして市などに賠償を求めた裁判は、東広島市が両親に謝罪し、再発防止策をとることなどで、3日、和解が成立しました。

11年前、東広島市の中学2年の男子生徒が自殺し、生徒の両親は複数の教員から繰り返し同じ指導を受けた結果、孤立感や無力感を深めたことが原因で『指導死』にあたるとして、東広島市などにおよそ1億1700万円の賠償を求めていました。
市側は争う姿勢を示し、裁判は8年にわたって続けられていましたが、裁判所が和解勧告を出し、3日、和解が成立しました。
両親の弁護士と市によりますと、和解条項には男子生徒への指導について、大声を出したり机を蹴ったりするなど威圧的で暴力的なものがあったことなどを市が認めて両親に謝罪するほか、指導によって子どもが追い詰められることがないよう教員への研修を行うなど再発防止策をとることが盛り込まれたということです。
また、東広島市が和解金として両親に1000万円を支払うということです。

和解の成立を受けて男子生徒の両親が記者会見を行い、生徒の父親は「教員による指導死だと認めてもらうことが裁判の目的でした。再発防止策をしっかり実施してほしいし、そこについては遺族としても協力していきたいと思っています」と話していました。
また、生徒の母親は、「一番大切な宝物だった息子の命を奪われたので、到底、先生方を許すことはできませんが和解は受け入れました。最も深く傷つけられたのは息子なので、息子に直接謝ってほしいです。息子がいないさみしさと長い裁判で何度も心が折れましたが、多くの人に支えられてきょうを迎えられました。なんとかここまで頑張ったよと息子に報告したいです」と話していました。

一方、東広島市教育委員会が記者会見を開き、市場一也教育長は「亡くなられた生徒のご冥福をお祈りし、ご遺族に心からお悔やみを申し上げます。かけがえのない命が失われたことを真摯に受け止めて再発防止に向けた教職員の研修の充実に努め、安全で安心な学校作りに取り組みます」と述べました。
その上で、「自殺に追い込まれたことは大変申し訳なく思っていて、遺族に対して謝罪する機会を設けたい」と述べました。

また、東広島市の高垣広徳市長は「改めて亡くなられた生徒のご冥福をお祈りし、ご遺族に対し、心からお悔やみ申し上げます。生徒1人の尊い命が失われたことを重く受け止め、このような悲しいことが2度と起こることがないよう、子どもたち一人ひとりが安全で安心して学ぶことのできる教育環境作りに取り組んでまいります」とコメントしています。

教員による不適切な指導によって児童や生徒が自殺に追い込まれるいわゆる「指導死」について、文部科学省は、毎年行っている自殺に関する調査の選択肢の中に「教職員による体罰、不適切指導」を新たに設け、初めて実態の把握に乗り出すことになりました。
文部科学省は毎年、児童・生徒の自殺や不登校などについて、全国の教育委員会を通じて調査を行っています。
この中で、「自殺した児童・生徒が置かれていた状況」として、学校側が10あまりの選択肢の中から当てはまるものをすべて選んで報告するようになっていますが、教職員による体罰などを明確に報告する選択肢はありませんでした。
こうした中、教職員の不適切な指導によって児童や生徒が自殺に追い込まれることを遺族らは「指導死」と呼んで実態解明を求める活動を続け、岡山市の県立高校で11年前に野球部の監督だった教諭からの叱責と体罰を受けて自殺した男子生徒の遺族は去年、調査の選択肢の見直しを要望していました。
これについて文部科学省が、令和4年度の調査から選択肢の中に「教職員による体罰、不適切指導」を新たに設けたことが分かりました。
文部科学省が「指導死」の実態把握に乗り出すのは初めてで、NHKの取材に対し「実態を把握することで“指導死”を可視化し、抑止につながって子どもの命が守られることを期待したい」としています。

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