[星になった少年]のご両親は、事実を明らかにし、自死に至った原因究明を求める請願書を東広島市議会へ提出した。請願書の写しを入手できたため、以下にその内容を示す。(添付資料を除く)
——————————————————————————–

市立高美が丘中学校中2男子生徒自殺の原因調査に関する請願書

1.請願の要旨
私は東広島市立高美が丘中学校で昨年10月29日に発生した,生徒指導をきっかけとして自死に至った自殺事件の遺族です。この度は,息子(以下「A君」という。)が自死した原因及び背景調査について昨年10月に施行されました「いじめ防止対策推進法」の重大事態への対処に準じた再調査を市長部局にて行っていただきたく,本書をもって要望を申し入れさせていただきます。

2.請願の理由
東広島市教育委員会事務局(以下、「教育委員会」という。)は、一昨年の12月に7日に当該生徒が死亡に至った経緯及び背景を明らかにするとともに、再発防止に向けて提言を受けることを目的として、生徒の死亡にかかる調査委員会(以下、「調査委員会」という。)を設置しました。
当該調査委員会は、昨年9月4日に調査報告書をまとめ教育長へ提出しましたが、直接的な原因のみを検討するにとどめ,当該生徒が自殺に至った背景にある事実の全貌を明らかにしないまま検討を終え,「事情等が複雑に関係しており、その一部だけが決定的要因になったと特定することは困難である」と判断しています。また、検討期間を1ヶ月以内とし「学校で何があったのか」事実を明らかにしていません。これは,当調査委員会が行った背景調査及び検討が不十分であり原因究明さていないことを表しています。
いじめ防止推進法の重大事態への対応では,「地方公共団体の長は,当該重大事態と同種の事態の発生の防止のため必要があると認めるときは再調査を行うことができる」とされています。当事件についてもA君は自殺を企図し自死しており,いじめ防止推進法の重大事態に等しいと考えます。
当調査委員会が行った背景調査及び検討が不十分である根拠を以下に示します。

①    調査報告書では,「小学校時代のA君は、新聞社の読書感想文コンクールで受賞するような文章も書け、またトイレ掃除などの作業も率先して引き受けるような、非常にまじめで意欲的、そして几帳面な生徒であった。その後、中学校に入学し、平成23年11月に、生徒指導規程に基づく特別な指導を受けることがあったが、態度も良く、立派な内容の反省文を仕上げた。]この時、A君から真に納得が得られていたのか、そして特別な指導のやり方等に問題がなかったか否かは、それ自体検討を要する事柄ではある」としながらも検討から除外しています。非常にまじめで意欲的なA君が、なぜ、特別な指導を受けることになったのか,この指導がA君から真に納得が得られていたのか,そして特別な指導のやり方等に問題がなかったか否かを十分に検討を行い,今後の生徒指導の改善に活かされるべきと考えます。この指導が,A君にとって納得できないものであれば,自死する約1年前から納得できない指導が繰り返されていたことになり,この指導は,十分な背景要因となり得るはずであり,検討から除外されるべきではありません。

②    平成26年1月17日の文教厚生委員会において、参考人として出席した吉中元委員長は、平成23年11月に起こった特別な指導から平成24年10月の箒事件までの間、特に大きな問題もなく平穏に学校生活を過ごしたと証言しましたが、この点において大きな事実誤認があります。]高美が丘中学校の生徒指導規定によると、特別な指導は第1段階から第3段階まであり、4ヵ月以上問題行動がなく努力が見られた場合には、指導段階を1段階下げるとされています。A君は,この特別な指導により第3段階を適用されており,特別な指導の段階的指導が解除されるには12か月を要し、亡くなった平成24年10月29日にも、特別な指導は継続的に行われていたことになります。また,同校では過去に別室指導を受けた生徒に進学の推薦を行わないなどの処罰があった経緯もあり,翌年に進学を控えたA君にとっては,特別な指導を受ける続ける事への精神的な負担も検討されるべきと考えます。

③    調査報告書18ページに、「A君は、Z教員以外にも複数の教員から注意を受けることがたびたびあつた。 しかし、A君は、なぜ自分だけが注意されるのか、納得していなかつた。このことが、学校生活において問題となるような行動を繰り返し、注意されるような事態を何度も引き起こしてしまつた一因になっている可能性が考えられる。なぜ自分だけが注意を受けるのか、不公平感を強く自覚していたのである。 しかも、注意を受けた後に、W教員に報告されることもあつた。W教員に報告されるたびに、野球が続けられなくなるのではないかという不安を感じていたと思われる。」と記述があります。このことからすると,自殺に至った経緯にある期間以外にも,日々,複数の教員から納得できない指導を繰返し受け,不安を感じていたのであれば,大きな背景要因となる可能性がありますが,事実としてどのような指導があり,生徒指導上何が問題であったのか明らかにされていません。

④    文部科学省が示している「教師が知っておきたい子どもの自殺予防」のマニュアル(平成21年3月27日 児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議)によると、『自殺はある日突然、何の前触れもなく起こるというよりも、長い時間かかって徐々に危険な心理状態に陥っていくのが一般的です。』と示されています。また,『じっくりと背景を理解しようとしなければ本質が見えてこない自殺もあります。自殺に至るまでの過程を丁寧に探ることではじめて、自殺に追いこまれる心理の解明や適切な予防策を打ち立てることが可能になります。』と示しています。にもかかわらず、調査委員会は、自死の1年前に起こった、一連の指導の発端である平成23年11月の特別な指導という重大な事案を、「直接的な関連性を認めることは困難」と調査対象から外しています。そのうえで、今回の事件における原因究明の対象を、平成24年10月5日の菷事件以降の出来事のみで行おうとすること自体、無理があると言わざるを得ません。

○結論
以上のことから,調査委員会は、事件の実質的な調査対象期間を、平成24年10月5日から自死当日である平成24年10月29日までのわずか25日間としたが、これでは原因の究明は不十分であると言わざるを得ません。真の原因究明には、非常にまじめで意欲的なA君が、特別な指導を受けるようになった中学校に入学してからの出来事から調査検討を行う必要があり,自死した当日までの『徐々に危険な心理状態に陥っていく過程』が全く調査検討されていなせん。まさにこの空白の期間に行われたことを明らかにすることが、真の原因究明には欠くことのできない最重要要素であります。よって、市長部局へ公正性・中立性のある新たな第三者委員会を設置し、いじめ防止推進法の重大事態への対処に準じ,未検討の期間を含め再調査し、自殺の原因究明と真の再発防止策を打ち立てることを強く要望すると共に、遺族が事実に向き合いたいという希望に応えるべく対応を切に望みます。

敬具

シェアShare on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

Post Navigation