2021年4月16日付毎日新聞

「部活の実態、学校で共有」 宝塚の中2転落事故で市教委が陳謝

報告書を公表し、記者会見で頭を下げる兵庫県宝塚市教委の森恵実子教育長(中央)ら幹部=同市役所で2021年4月15日午後2時0分、土居和弘撮影

 15日、兵庫県宝塚市立中学校で2019年6月、吹奏楽部の女子生徒(当時2年)が部活動中に校舎から転落し重傷を負った事故について、弁護士らによる第三者委員会の調査報告書が公表された。顧問の男性教諭(31)による女子生徒への叱責を直接の原因だったと認定した上で、背景に部活内でのコンクールの成績を重視する姿勢や、学校で部活が「ブラックボックス化」し適切に管理できる体制がなかったことなどを指摘、部活のあり方を強く批判した。一方、生徒の母親が代理人弁護士を通じて手記を明らかにし、今も癒えない心情を吐露した。【土居和弘、稲田佳代】

「被害に遭われたお子様、保護者の方には心身ともに大きな苦痛を与え、深くおわびします」。市役所で開かれた記者会見の冒頭、市教委の森恵実子教育長ら幹部は頭を下げた。

報告書では、男性教諭の指導は部員への叱責が大半で、褒めることがほとんどなかった▽強圧的な指導が日常的に部員に大きなストレスを与えていた――など、指導上の問題点を列挙。第三者委は問題の背景にも言及した。当時の吹奏楽部について、コンクールで好成績を上げることに重点が置かれ、練習でもミスを許さない緊張感があったと指摘。学校では部活の活動実態について校長らが把握せず、教員間で情報共有ができていないなどとし、外部から実態が分からない部活の閉鎖性を「ブラックボックス」と批判した。

森教育長は「顧問任せだった部活を、学校で実態を共有する体制に改革する」と強調。市教委は生徒が望む部活動にするため、生徒との対話を重視する指導に改めるよう顧問に促し、実践例を紹介する研修も開く方針だ。また、生徒や顧問教員らを対象とした「部活動アンケート」を毎年実施し実態を把握するほか、専門家や教職員らからなる部活動の運営検討会も設置し、各校の活動を検証するとした。

一方、市教委はこれまでに、顧問の男性教諭が生徒側と謝罪の場を持てていないことを明らかにし、報告書の公表を踏まえ、謝罪の機会を探るとした。

「再発防止策の徹底を」女子生徒の母

女子生徒の母親は15日、手記を公表した。その中で母親は女子生徒について、「真面目にコツコツ頑張る子」と紹介。「音楽を楽しみたい」と吹奏楽部へ入部したが、時折、顧問の男性教諭が他の部員を厳しく叱責している様子を見て、「あんな風に怒られたくないな」と話していたことを振り返った。

また、転落後に駆けつけた教諭に、一瞬意識が戻った女子生徒が「先生すいませんでした」と謝ったことや、母親が病院で女子生徒と対面した際にも、最初に「ごめんね。ああするしかなかってん」と話し、母親が「ごめんね。生きててくれて良かった」と応じたことも明かした。

手記によると、女子生徒は約4カ月半入院し、計8回の手術を受け、現在もリハビリや治療を続けている。母親は「大きな傷は一生涯消えず、目にするたび事件を思い出してしまうかと考えると、心に治癒することのないつらい後遺症を残してしまった」と心配する。そんな中でも、女子生徒は家族の支えで勉強に励み、今春、志望高校に入学した。

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