平成29年11月28日付朝日新聞東京本社版夕刊
いじめ受け自殺未遂「怖くて学校休んだ」 女子生徒の声
公園で母親(右)の腕に手を回す女子生徒=11月、兵庫県内
神戸市内の私立高校に通う女子生徒(18)が今年2月、いじめを受けて自殺未遂をした問題で、女子生徒と母親37)が朝日新聞の取材に応じた。女子生徒は「(私をいじめた相手が)今も怖い」とする一方、同じような悩みを抱える人たちに「苦しさを抱え込まないでほしい」と語った。
学校が設けた第三者委員会の調査報告書によると、女子生徒は昨年9月、同級生グループから、教室の自分の机や椅子に
大量の紙切れを貼りつけられるいじめを受けた。女子生徒は衝撃を受けたが、「どのように反応すればいいのかわからなかった。笑いたくもないのに笑った」と振り返った。
この状況を見た担任教諭は「(仲間同士の)じゃれあい」と判断し、校内で情報共有するなどの対策は取らなかったという。その後もいじめは続いたといい、女子生徒は「聞こえるように悪口を言われ、気に障ることがあると私のせいにされた。学校が怖くて休むことが増えました」。
思い悩んだ女子生徒は2月24日、兵庫県南部の公園で自殺を図った。その直前、母親と姉に無料通信アプリ「LINE」で「もう、いっぱい我慢したかなって思う」などと自殺を示唆するメッセージを送っていた。母親はすぐ警察に連絡し、女子生徒の携帯電話を鳴らし続けた。「生きていてほしいと必死でした。警察に『とにかく捜してほしい』と訴えました」と話す。
女子生徒は卒業後に専門学校に進学する予定だ。母親は「専門学校でもまたいじめられるのではと時々不安になるみたい」といい、「大丈夫。大丈夫やで」と声をかけているという。
女子生徒は「今もいじめられた相手が後ろにいたり、声が聞こえたりするように感じる時がある」と話す。それでも、こう思うようになったという。「私は死のうとした。でも、いじめを受けている人は、大切な人に、少しでも早く打ち明けてほしいと思う」(高松浩志)
《いじめによる自殺で一人娘を亡くし、いじめ問題に取り組む川崎市のNPO法人「ジェントルハートプロジェクト」理事の小森美登里さんの話》 2013年9月にいじめ防止対策推進法が施行され、対策組織の常設が各校に義務づけられたが、形式的なものにとどまり、問題が起きても情報共有すらなされないことも多い。深刻ないじめを「じゃれあい」と受け止めた今回のケースは典型的だ。自殺未遂にまで追い込まれた女子生徒の苦しみを癒やすのは容易ではないが、周囲の大人たちが「あなたが死んだら悲しい」と繰り返し伝え、SOSに気づかなかったことに心からの謝罪をするしかない。