2022年12月6日付熊本日日新聞

いじめ関与の生徒名、再び開示命令 熊本県央・高3自殺で福岡高裁 第三者機関の黒塗り報告書

県の第三者機関がまとめた調査報告書の黒塗り部分を示す遺族=10月中旬、熊本市中央区

2013年4月にいじめを理由に自殺した熊本県央の県立高3年の女子生徒=当時(17)=の遺族が県と当時の同級生8人に損害賠償を求めた訴訟で、福岡高裁(久保田浩史裁判長)が熊本地裁と同じく、いじめに関与した生徒の氏名を黒塗りにしていない県の第三者機関の「調査報告書」を地裁に提出するよう、県に命じたことが5日、分かった。

決定は11月29日付。県は一部を除き全て開示した報告書提出を命じた今年5月の地裁決定を不服として即時抗告していた。

高裁は、第三者機関が学校調査に納得しなかった遺族の要望を踏まえて設置された経緯を挙げ、「委員は報告書の重要部分が遺族に開示されることは想定し、その前提で作成されたと推認される」と指摘。報告書のうち、アンケートや聞き取り調査に回答した証言者の氏名

以外の部分は、地裁への提出で公務の遂行に著しい支障が生じる具体的な恐れは認められないとした。

県は抗告理由書で、生徒名などを開示すれば関係者に不利益を与え、二次被害の恐れがあるとし「第三者機関に対する信頼を裏切ることになり、今後の調査に大きな影響を与える」と主張していた。県は「主張が認められなかったのは残念。最高裁への特別抗告も含め、対応を検討している」とした。

高裁決定を受け、遺族は「いじめた側を守り、いじめられた側が守られないのは精神的な苦痛が大きい。県は裁判所の判断を素直に認めてほしい」と話している。

県は15年1月に第三者機関の調査報告書を公表。遺族に渡ったものは、いじめに関わった生徒の氏名が黒塗りで、誰がどのようにいじめに関与したかは分かっていない。遺族は自らの聞き取りなどで8人を特定した。(臼杵大介)

 

県立高3年女子生徒の自殺 女子生徒は2013年4月11日、自宅で自殺。体育大会のダンス練習がうまくいかずに悩み、携帯電話に「皆の言葉が痛い…視線が痛い…消えたい…」などと書き残していた。学校による直後の調査は「いじめはあったが、自殺の要因とは確定できない」とした。

不服とする遺族の意向を受け、再調査した県の第三者機関は「いじめが自死の要因の一つ」と結論を出した。

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