2019年10月29日付西日本新聞
中1自殺、遺族へ調査報告拒む 熊本市教委「国の指針知らず」
熊本市の中学1年の男子生徒が4月、自宅マンションから飛び降りて死亡した事案を巡り、市教育委員会が原因などを調査した結果について、男子生徒の保護者への説明を拒否していたことが28日、分かった。文部科学省は自殺の背景調査に関する指針を定め、結果を遺族に説明するよう求めているが、市教委は「指針の存在を把握していなかった」と釈明している。
男子生徒が飛び降りたのは入学式の1週間後だった。熊本県警は「自殺の可能性が強い」と判断。市教委は、いじめやトラブルがなかったか、男子生徒が通っていた小学校も含めて教師や児童生徒に聞き取り調査し、5月に「原因は学校生活に関係するものではない」との結論を出していた。
男子生徒の母親は、「死」と記した小学6年時のノートが見つかったこと、当時の担任が別の複数の児童とトラブルを起こしていたことなどを市教委側に伝え、調査を要請。7月下旬に情報公開請求したところ、市教委は「自殺の原因は学校生活とは無関係と判断したため、調査資料は公開できない」と説明を拒否した。
文科省が2014年に全国の教委に通知した「子供の自殺が起きたときの背景調査の指針」では、児童生徒の自死事案が発生した場合、原因にかかわらず学校が調査し、結果を教委や遺族に報告・説明するよう定めている。学校生活は保護者から見えない点も多く、「遺族の知りたい気持ちに応えつつ、再発防止の観点がないか探ることが目的」(同省)という。
西日本新聞の取材に対し、市教委総合支援課は「取材を受けるまで指針の存在を把握していなかった」と釈明。文科省は毎年、会議などで周知するとしているが、同課は「情報の共有ができておらず、通知があった当時の担当者から引き継ぎもなかった」と答えた。
文科省児童生徒課は「熊本市教委の一連の対応は理解しがたい」とコメント。男子生徒の母親は「一人で調べるには限界があり、何度も調査をお願いした。市教委の対応は信じられない」と話した。 (壇知里)