中2自殺、遺族と市和解 いじめ相当「認められた」と涙

2021年6月30日朝日新聞

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真弥香さんの遺品を説明する中村幹年さん=2021年6月29日、鹿児島市、仙崎信一撮影

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記者会見する中村幹年さん(左)ら=2021年6月29日、鹿児島市、仙崎信一撮影

鹿児島県出水市で2011年に自殺した中学2年の女子生徒(当時13)の遺族が、吹奏楽部内のいじめを放置したなどとして市に損害賠償を求めた訴訟で、鹿児島地裁で29日、両者の和解が成立した。

亡くなったのは中村真弥香(まやか)さん。和解の文書によると、バッグを蹴られるなどいじめをうかがわせる10項目の事実があったことや、それに近い時期に真弥香さんが死亡したことを認め、真弥香さんが死亡した後の調査や対応が遺族の期待に沿うものでなかったことについて市が陳謝する。また、解決金として市が遺族に200万円を支払う。

いじめの有無については明確にされなかったが、真弥香さんの祖父の中村幹年さん(71)は記者会見で「いじめに相当する事実が遺族の主張に基づき認められたと考えている。和解は遺族に寄り添った内容」と評価した。

真弥香さんは11年9月1日、始業式の朝に命を絶った。学校が行った生徒へのアンケートに吹奏楽部内でのいじめをうかがわせる記述があったことから、遺族は17年5月、自殺といじめの因果関係を明らかにするため、市側に1200万円の損害賠償を求めて提訴した。鹿児島地裁は昨年12月、和解を勧告していた。(仙崎信一)

亡くなって10年、やっと決着

2011年、鹿児島県出水市で市立中学2年の中村真弥香さん(当時13)が自殺したことをめぐり、遺族が市を訴えた裁判が和解で決着した。真弥香さんが命を絶って10年近く、提訴から4年が過ぎた。遺族は「実質的にいじめが認められた」と和解内容を評価した。

29日午前、遺族と、被告の市側の和解が鹿児島地裁で成立した。いじめをうかがわせる10項目の事実と、それに近い時期に真弥香さんが死亡したことに双方が合意。死亡後の調査や対応が遺族の期待に沿うものでなかったことに、市が遺憾の意を表し、陳謝することが盛り込まれた。

当時はいじめ防止対策推進法が制定されていなかったが、真弥香さんの置かれた状況について、推進法などに照らして考えた場合、「いじめの存在を想定して対応を検討すべき状態にあったことを認める」という文言も入った。

和解後、真弥香さんの祖父母の幹年さん(71)、より子さん(70)が並んで記者会見に出席した。幹年さんは「2011年9月1日、孫が自ら命を絶ってから10年。ただ真相が知りたい、真弥香がどんな気持ちだったのか知りたい。その一心でした」と涙を流し、「いじめに相当する事実が遺族の主張に基づき認められた」と和解を受け入れた理由を説明した。

「知りたい一心」 遺族は涙

和解で認められた、バッグを蹴られるなどの行為について「いずれもいじめに相当することは明らか」とし、「いじめは犯罪。出水市やすべての学校関係者や教育委員会の方々には、事件の教訓を今後に生かしてほしい」と要望した。

和解の成立を真弥香さんの墓前で報告するとしたうえで、市側には「(真弥香さんに)線香の1本でもあげてほしい」と求めた。

今回の和解文書にいじめがあったことを認める直接的な文言はない。これについて、原告側の大毛裕貴弁護士は「10項目の事実がいじめであることは明確」との認識を示した。

一方、出水市の椎木伸一市長は「大切な子どもの尊い命が失われたという事実、真相究明に至らず結果的にご遺族の期待に沿えなかったこと、長い間、負担をおかけしたことに対して遺憾の意を表し陳謝します」とするコメントを発表した。(仙崎信一)

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