平成31年2月21日付神戸新聞社説

大津いじめ訴訟 加害者の重い責任認めた

いじめが自殺の原因と明確に認め、多くの被害者や遺族に救済の道を示した判決といえる。

大津市の中2男子いじめ自殺訴訟で、大津地裁は加害者側の元同級生2人に、ほぼ請求通り計約3750万円の支払いを命じた。

2012年に遺族が、元同級生と市に賠償を求めて提訴した。その後、市の第三者委員会がいじめと自殺の因果関係を認定し、過失責任を認めた市は遺族と15年に和解した。

一方、元同級生側は「遊びの延長だった」と反論し、訴訟が続いていた。

判決は、元同級生2人が顔面に落書きしたり、蹴ったりする暴行など執拗ないじめ行為があったことを認定した。「いじる」「いじられる」という上下関係の固定化などから、絶望感を抱き、

男子生徒は死にたいと願うように至ったと指摘した。

いじめ自殺を巡る損害賠償訴訟では、加害者側が自殺を予見できたとする立証が原告側には高いハードルだった。

判決の根拠となったのは、「息子だけの裁判ではない」との思いで闘い続けた遺族側が提出した証拠だった。地裁は全校生アンケートなど約500点を丹念に分析し、自殺は予見できる事態だった、と結論付けた。

「遊び」や「いじめと思っていない」は加害者側がよく使う表現だが、繰り返された行為自体の悪質性を基に重い責任を認めたのは画期的といえる。

大津のいじめ自殺問題は、深刻ないじめ被害への対策を社会が求められる契機となった。いじめを定義した議員立法の「いじめ防止対策推進法」成立にもつながった。

全国の学校でのいじめ認知件数が急激に増えるなど、積極的な状況把握への意識が根付いた学校が増えたのは確かだ。

しかし、いじめを理由にした自殺は後を絶たず、学校や教育委員会の不適切な対応もいまだに多い。遺族側への情報開示や調査する機関の独立性は大きな課題として残っている。

いじめの危険性に警鐘を鳴らした判決である。学校関係者は異変を見逃さないこと、被害者の目線でとらえることの大切さを改めて認識し、いじめの根絶を実現しなければならない。

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