平成31年2月20日付京都新聞

中2自殺、元同級生側に賠償命令 大津地裁「いじめが原因

  大津市で2011年10月、中学2年の男子生徒=当時(15)=が自殺したのは元同級生によるいじめが原因として、遺族が元同級生3人と保護者に計3800万円の損害賠償を求めた訴訟で、大津地裁(西岡繁靖裁判長)は19日、元同級生2人に約3700万円の賠償を命じる判決を言い渡した。西岡裁判長は「いじめが自殺の原因で、予見可能性はあった」と述べた。もう一人の同級生について判決は、「一体となって関与していたとまではいえない」として、賠償を命じなかった。

裁判で遺族側は、男子生徒が自殺の前日に「ぼく死にます」との電話を元同級生にかけていた経緯などから、いじめを苦に自死したと主張。一方、元同級生側は男子生徒に馬乗りになるなど一部の行為自体は認めたものの、いじめではなく、「遊びだった」などと反論。いじめと自殺の因果関係が大きな争点になった。

訴訟は、遺族が12年2月、大津市や元同級生3人、保護者を相手取り、計約7700万円の損害賠償を求めて提訴。当初、市側は争う姿勢を示したが、後に自殺との因果関係や過失責任を認めたため、15年に和解が成立している。

大津いじめ事件は、いじめの問題を社会に広く投げかけ、学校に常設の対策組織を置くことを明記した「いじめ防止対策推進法」が成立するきっかけとなった。

「いじめが危険行為と認定された」中2自殺賠償判決で原告父が涙

男子生徒の自殺から、7年4カ月余り。19日の大津地裁判決は、いじめを自殺の原因と認定しただけでなく、いじめが「被害者を自死に追い詰める」という危険な行為であることを司法が認めた。

弁護士は「いじめ自殺を二度と繰り返さないという司法のメッセージだ」と高く評価し、父親は「これまでのいじめ訴訟を大きく前進させる。ここまでの画期的判決が出るとは」と涙を流した。

この日、男子生徒の父親と母親は、法廷で並んで判決を聞いた。ほほえむ息子の遺影をハンカチに包み、手元にしのばせていた。

「男子生徒を格下と位置づけ、暴行がエスカレートしていった」「自殺の主たる原因はいじめ行為や関係性にあった」。判決が読み上げられるほどに、父親は涙をこらえきれない。「原因を家庭に求めることはできない」。うつむいていた母親もハンカチで目元を覆った。公判が終わっても父親はしばらく立ち上がれず、おえつした。

なぜ、自ら命を絶ってしまったんだ-。息子の自殺の直後、父親は分からなかった。ひょうきんで、友達も多かった男子生徒。もしかして、自分の子育てに至らない点があったのか。思い悩んだ。

しかし、中学校が実施したアンケートで、同級生に殴られ、ハチの死骸を食べさせられ、教科書を破られるなどのいじめを受けていたと知った。でも、学校はいじめが自殺の原因だと認めない。

「何とか息子の名誉を回復させてあげたい」。両親は大津地裁に提訴した。裁判は丸7年、審理は33回に及んだ。

判決後の会見で、父親と遺族側代理人の石田達也弁護士は「いじめは、一般的に人を死に追い込む危険な行為だと初めて認められた。大きな一歩だ」と何度も強調した。いじめ自殺の裁判の多くは、全国で加害者側の自殺の予見性を否定しており、遺族は悔しい思いを続けていた。

7年間、父親は全国のいじめ被害者や遺族との交流を重ねてきた。全国から応援の手紙を何通も受け取った。今も苦しむ人がこんなに多くいるのか。息子の名誉を回復させるために始めた裁判は、いつしか「全国のいじめ被害にあった多くの子どもたちと遺族のため」に変わっていった。

判決後、息子への思いを聞かれた父親は「息子は、きょうの判決を勝ち取るために生まれてきたのかな」と声を震わせた。

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